元経産官僚・岸博幸が斬る――リニア反対は「私利私欲」、静岡県を貶める川勝知事の「醜悪パフォーマンス」検証・リニア静岡問題(3/4 ページ)

» 2020年04月09日 08時00分 公開
[河崎貴一ITmedia]

昭和の「ハコモノ行政」そのもの

──川勝知事は、民主党(当時)の支援を受けて当選した当初、「ハコモノはゼロベースで見直す」というスローガンを掲げました。リニア中央新幹線のトンネルには環境問題を掲げて反対をしていますが、一方では、富士山世界遺産センター、富士山静岡空港ターミナルビル、ふじのくに茶の都ミュージアム、日本平夢テラスというように、「ハコモノ行政」を展開してきました。最近では、県立中央図書館を中心とする「文化力の拠点」構想が物議を醸しています。

photo 富士山静岡空港のターミナルビル

 まるで、昭和のハコモノ行政そのものですね。訳の分からない図書館を建てたりトンチンカンなことをやったりしています。私は、あれは絶対におかしいと思っています。ハッキリ言うと、図書館は文化の拠点ではありません。図書館ができれば、地域が活性化するなんてことは絶対にありません。そういう発想自体が「非常識」です。

 私は、日本の活性化に、地元の文化や環境を活用するのは大事なアプローチだと考えています。静岡の文化と言えば、お茶とか、富士山とか、コンテンツはたくさんありますね。しかし、富士山世界遺産センターや、ふじのくに茶の都ミュージアムなどのハコモノを造ったり、空港や新幹線の駅を造ったりすれば、観光客が日本や世界から来ると思うのは大間違いです。実際、ふじのくに茶の都ミュージアムの近くに富士山静岡空港がありますが、観光客はあまり足を運んでいない。

 逆に、魅力的な文化があれば、たとえハコモノはなくても、交通手段は悪くても、観光客は集まってくるものなんです。

 とくに図書館を文化の拠点にするなんていう「支離滅裂」なことを平気で言っている。「それは違うでしょ」という気がします。

photo 富士山静岡空港にて

──川勝知事の行政手腕をどう評価しますか。

photo 県議会で答弁する川勝知事(2019年12月)

 静岡市には、東京から新幹線「ひかり」に乗れば1時間で行けます。気候も温暖で、環境にも恵まれています。だから、製造業にしても農業にしても、もっともっと強くなれる下地がある。地方創生の観点からいえば、成功例になれるはずなのに全く成功していません。

 静岡県は人口減少が続いていて、経済も地盤沈下しつつあります。静岡駅前の商店街の活気のなさを見ればよく分かります。それはなぜか。川勝知事にしても、田辺信宏・静岡市長にしても、静岡県や静岡市のために、ほとんど何もやっていないからです。

 静岡市は、全部役人まかせ。知事もこの体たらく。

 例えば私が関わっている事例では、福井県鯖江市があります。鯖江市はメガネ製造のイメージしかない人が多いでしょう。日本海側だから冬の気候は厳しいし、敦賀の原発エリアに比較的近くて(最短距離は約35キロ)、あまりいい印象はありません。

 ところが、約6万8000人(外国人も含めると約7万人)の鯖江市の人口は、毎年100人規模の単位ではありますが、10年以上増え続けているんです。

 それは、改革派の牧野百男(まきの・ひゃくお)市長が、若い人ややる気のある職員の才能を最大限に引き出しているからです。牧野市長は75歳を過ぎた後期高齢者でありながら、若い職員や若い人の意見をよく聞いて、やる気がある職員には、「責任はおれが取るから、やってみろ」と任せるんです。

 現場も市長の意気に応えています(編注:鯖江市は、女子高生の意見や企画を活用する「市役所JK課」や、条件をつけないで移住体験をしてもらう「ゆるい移住」、体験型マーケット「RENEW(リニュー)」などさまざまな取り組みを展開している)。

photo 福井県鯖江市の牧野百男市長(鯖江市のWebサイトより)

 政治家に、「成功したら自分の功績、失敗したら部下(または秘書)の責任」という人が多いのとは、正反対です。

 川勝さんに関して言えば、「専門家会議の委員を公募する」「図書館を文化の拠点にする」などと言っているようでは地元を活性化するのは無理ですよ。川勝さんの行政の手法は、やれ空港活性化だ、やれ新駅だ、やれ図書館だと、かなり稚拙ですよね。

 ハッキリ言うと、学者上がりの政治家はこういうケースが多い。だから、学者上がりが首長をやると、大体失敗します。私は、川勝さんは、政治家としては「0点」だと思います。

photo 「市役所JK課」(鯖江市のWebサイトより)

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