「高級食パン」に「萌え断」 空前の食パンブームが起きたビジネス的“必然”に迫る食の流行をたどる(4/4 ページ)

» 2020年04月12日 05時00分 公開
[有木 真理ITmedia]
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老舗の和菓子ブランドも注目

 そんな食パンの可能性に注目して、ある企業が食パンマーケットに参入している。京都銘菓「つぶあん入り生八つ橋 おたべ」や「京ばあむ」を製造販売し、抹茶ソフトクリームやパフェで人気を誇る「辻利」ブランドを展開する株式会社美十(京都市)だ。京都のお土産、スイーツのマーケットをけん引してきた同社は、2019年12月1日、京都に「別格」をオープンした。食パンの人気店を次々とプロデュースするジャパンベーカリーマーケティングの岸本拓也氏とタッグを組んだ“高級食パン専門店”だ。

 おたべで使用している日本名水百選・瓜割の水や、おたべと同じあんこを練りこんだ食パンも展開。老舗のこだわりと技術で開発した食パンは、オープン以来大人気となっている。では、老舗の和菓子ブランドがなぜ、食パンマーケットに参入したのか? その要因を、同社代表の酒井氏に聞いてみた。

 「食パンは、パンの中でもお土産になる可能性が高く、1人で複数個購入される可能性が高い。さらに、食パンは付加価値をつけて展開しやすいため、食パンブランドが確立されれば、それをアレンジして商品開発を進めることができる」とのこと。まさに、この食パンブームをけん引した2つの要因をマーケットチャンスとして捉え、展開しているのである。おたべや京ばあむを中心に、お土産の製造販売を続けてきた同社ならではの考えである。

「別格」のパン(出所:別格公式Webサイト)

 では、食パンは今後どのようになっていくのだろうか?

 高級食パンのジャンルは、一過性のブームではなく、日本で定番化していくであろう。さらに進化系として、いくつかの可能性に期待している。日本のきめ細やかで、丁寧な技術は食に限らず、世界に誇るものと考える。

 まず、この日本の「パンの技術」が世界に注目され、輸出される可能性はないだろうか? 牛肉(BEEF)のカテゴリーにおける「WAGYU(和牛)」、お茶(TEA)のカテゴリーの「MATCHA(抹茶)」のように、「SYOKUPAN」が日本を代表するパンになることに期待したい。また、食パンに限らずではあるが、「パン」はもっと主役化する可能性があると感じている。東京・中目黒のフレンチレストラン「クラフタル」では、ドリンクペアリングならぬ、パンペアリングを展開している。料理一皿一皿にあったパンが提供されるのだ。まさにパンが主役のコース料理といっても過言ではない。“糖質制限”のブームも続いているが、“NO 炭水化物、NO LIFE”なのではないか。

 4月12日は「パンの記念日」だそうだ。さらにパンの可能性について、思考してみたいと思う。

著者プロフィール

有木 真理(ありき まり)

「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員。1998年、同志社大学を卒業後、外食チェーン店へ。6年間勤務したのちに、フリーのフードコーディネーターに。2003年、リクルートに入社し、『ホットペッパーグルメ』に従事。全国の営業部長を経たのち、2017年、リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、「ホットペッパーグルメ外食総研」の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300回以上。ジャンルは立ち飲み〜高級店まで多岐にわたり、全国の食に詳しい。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。食を通じて「人」と「事」をつなげるイベントオーガナイザーも務める。自らが「トレンドウォッチャー」として情報発信を行う。


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