中国人頼みだった観光業界に激震 「インバウンド消費低迷」に追い打ちをかけた新型コロナ新型肺炎が教える中国ビジネスのリスク(4)(2/3 ページ)

» 2020年04月17日 17時10分 公開
[島崎晋ITmedia]

コロナで凍り付いた日本の「春節商戦」

 現在、日本国内で最も多くの感染者が出ているのは東京都だが、3月24日までは北海道だった。中国とは趣(おもむき)を異にする自然の景観に加え、海の幸と陸の幸が豊富。温泉もあちこちにあるなど、いくつもの魅力が重なっているのだから、人気があるのも当然だ。

 タイやマレーシアなど東南アジアの人びとには本国では縁のない雪景色も魅力のようだが、中国人は春ならば桜、夏ならば野花と、四季それぞれの光景を楽しみにしているので、季節を選ばない。それでも例年、冬場の訪日客が増えるのは、春節(旧暦の正月)と重なるからだ。

 日本でも江戸時代まで、商家で丁稚奉公(でっちぼうこう)をする若者が、家族の不幸以外で実家に戻れるのはお盆と正月に限られていた。中国でも長らく、戻るのは春節のみという慣習があり、現在でも混雑や運賃の高騰を承知のうえで、春節には必ず帰省する人が少なくない。中国人にとって、それだけ特別な意味を持つ日なのである。

 近年はライフスタイルの変化から、1週間から半月に及ぶ春節の休みを利用して国内外の旅行を楽しむ人も増えており、往復に要する時間も考慮して、比較的近い日本を選ぶ人が多くいるのだ。日本の観光業界も数年前からそれに注目かつ期待を寄せ、春節を一番の稼ぎ時とカウントするようになった。

 初心者であれば京都、リピーターは北海道か九州といった大まかなすみ分けはあるが、訪日のたびに新規開拓に励む中国人が増加傾向にあり、バス会社やホテル・旅館だけでなく、コスプレ体験や忍者体験、動物カフェ、コンセプト居酒屋など、中国人のインバウンド消費で潤う業種は増える一方だった。

 それだけに今回の新型肺炎感染拡大の影響は大きく、すでに旅館やバス会社の人員整理や倒産がいくつも報道されている。終息して、日中間の往来が元に戻ったときに供給不足に陥るのは目に見えているが、現時点ではそこまで考えて計画を立てられる余裕はどこにもないだろう。現実に鑑みれば、現場の人間にそれを求めるのは酷な話。だが、終息の見通しが立った時点で、頭を切り替えることは必要だろう。

photo コスプレ体験や忍者体験、動物カフェ、コンセプト居酒屋など、中国人のインバウンド消費で潤う業種は増える一方だった(写真提供:ゲッティイメージズ)

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