会社の数字〜注目企業を徹底分析〜
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» 2020年05月14日 14時54分 公開

磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」:トヨタ自動車、来期営業益8割減の衝撃 「コロナ恐慌」が大手企業も飲み込む (2/3)

[磯山友幸,ITmedia]

ホンダ、日産の赤字幅は広がる

 5000億円の黒字という数字について豊田社長は次のように述べている。

 「これは、現時点での見通しではありますが、何とかこの収益レベルを達成できたとすれば、これまで企業体質を強化してきた成果といえるのではないかと思っております」

 逆に言えば、これまで取り組んできた「大変革」がなかったら、リーマン・ショック後同様、赤字に転落していたということだろう。豊田社長は自ら取り組んできた変革は、「長い年月をかけて定着してしまった『トヨタは大丈夫』という社内の意識、それを前提にモノを考える企業風土」を変えることだったと振り返る。カンパニー制の導入や副社長の廃止など経営陣の在り方を見直す一方、ベースアップをゼロにし、「一律の配分」などの従来の「常識」に踏み込み、抜本的な働き方改革に取り組んでいる。背景には豊田社長の強い危機感があった。

 そこに襲った新型コロナ危機は、まさしく「トヨタは大丈夫」という世の中の意識を揺さぶる事態になっている。それほど自動車業界を襲っている危機は猛烈だ。

 同日発表した本田技研工業(ホンダ)の2020年3月期決算は四輪車の販売台数が479万台と10%減少となり、営業利益は6336億円と12.8%も減少した。八郷隆弘社長は「チームホンダ一丸となって必ずこの難局を乗り越えていく」と述べたものの、2021年3月期の見通しについては、合理的に算定することが困難だとして未定とした。

phot 本田技研工業の2020年3月期決算は四輪車の販売台数が479万台と10%減少となり、営業利益は6336億円と12.8%の減少(本田技研工業のWebサイトより)

 5月末に決算発表を予定する日産自動車は、4月28日の段階で2020年3月期の営業利益が1200億〜1300億円程度悪化する可能性があると発表している。営業利益の従来予想は850億円なので、営業損益段階で赤字に転落する可能性があるということだ。もともと日産は、カルロス・ゴーン元会長の逮捕などで経営体制がぐらついており、販売不振が続いていた。そこに新型コロナが追い打ちをかける形になっている。2021年3月期は赤字がどこまで大きくなるか見通せない。

phot 日産自動車は、4月28日の段階で2020年3月期の営業利益が1200億〜1300億円程度悪化する可能性があると発表している(日産自動車のWebサイトより)
phot 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長

 自動車会社の不振の、日本経済への影響度は計り知れない。自動車産業の裾野は広く、日本自動車工業会の集計では、自動車関連の就業者は546万人と全就業人口の8.2%に達する。自動車会社の生産台数の落ち込みに加え、生き残りに向けて原材料費の圧縮などに踏み切れば、自動車メーカーに連なる2次下請け、3次下請けで従業員や非正規労働者の解雇などが広がる可能性がある。

 実際、リーマン・ショック後には非正規雇用者の雇い止めなどが発生、就業者数は2008年7月の6430万人から2009年7月には6303万人に減少、完全失業率は3%台から一気に5.5%と戦後最悪の数字にまで跳ね上がった。就業者数はその後2010年2月に6223万人まで減少、この間200万人が職を失った。

phot 日本自動車工業会の集計では、自動車関連の就業者は546万人と全就業人口の8.2%に達する(日本自動車工業会のWebサイトより)

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