会社の数字〜注目企業を徹底分析〜

トヨタ自動車、来期営業益8割減の衝撃 「コロナ恐慌」が大手企業も飲み込む磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(1/3 ページ)

» 2020年05月14日 14時54分 公開
[磯山友幸ITmedia]

 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で緊急事態宣言が全国に拡大されて1カ月近くになる。この間、店舗の営業自粛など経済活動が止まったことで、宿泊業、飲食業や小売業といった中堅中小企業や零細事業者が経営に行き詰まる例が増え始めている。

phot 2020年3月期決算説明会に臨むトヨタ自動車の豊田章男社長(トヨタ自動車のWebサイトより)

新型コロナ関連の経営破綻は141件に

 東京商工リサーチによると、新型コロナ関連の経営破綻は5月13日現在141件。3月に23件、4月に84件、5月も13日までに32件が発生した。観光客が激減したホテルや旅館などの宿泊業が30件と最も多く、飲食業が21件でこれに次ぐ。零細な飲食店などでは経営破綻ではなく先行きが見通せず「廃業」するところも少なくない。

phot 新型コロナウイルス関連の経営破綻数の推移(東京商工リサーチのWebサイトより)
phot 新型コロナウイルス関連倒産の産業別件数比(東京商工リサーチのWebサイトより)

 政府は雇用調整助成金の拡充や持続化給付金など新型コロナ対策で導入した新制度で経営破綻を防ごうとしているが、月末越えの資金繰りなどに窮する企業や零細事業者が増えている。このままでは経営破綻が一気に増加する可能性もある。

 だが、問題は中小企業にとどまらない。経済が凍りついたことで、大企業にも深刻な影響を及ぼす可能性が強まっている。

 5月12日にトヨタ自動車が発表した2021年3月期決算予想には衝撃が走った。3月の段階では「日本の大企業は余裕があるから大丈夫ですよ」と語っていた霞ケ関の幹部も、言葉を失った。

phot 連結決算要約(以下、資料はトヨタ自動車のWebサイトより)

 連結営業収益は24兆円と何と19.8%も減少する見込みとし、営業利益に至っては前期実績の2兆4428億円から79.5%減、つまり5分の1の5000億円とした。しかも決算短信には税引き利益は「未定」と書かれ、前期に220円だった配当も空欄になっていた。説明には「新型コロナウイルスの収束時期は依然として不透明であることから、連結業績の見通しは、今後の感染拡大や収束の状況等によっては変動する可能性があります」とある。5000億円の黒字、というのも状況次第では確保できない可能性があるというのだ。

phot 連結決算見通し要約(以下、資料はトヨタ自動車のWebサイトより)

 この日発表した2020年3月期決算は、連結売上高も営業利益も1%の減少にとどまった。全世界での販売台数は895万8000台と前の期に比べて1万9000台減少(0.2%減少)したものの、国内販売は224万台と1万4000台増加(0.6%増加)した。所在地別の営業利益でも「日本」が最も利益に貢献している。

phot 全世界での販売台数は895万8000台と前の期に比べて1万9000台減少(0.2%減少)
phot 所在地別の営業利益でも「日本」が最も利益に貢献している

 為替がやや円高になったことで営業利益段階で3050億円の影響が出たが、「原価改善の努力」によって1700億円を吸収、減価償却方法の変更などもあり、ほぼ横ばいの営業利益を確保できたという。新型コロナの蔓延に伴う影響は台数減で1000億円、貸倒引当金の繰入などで600億円だったという。

 もっとも新型コロナが真っ先に蔓延した中国での事業については、連結子会社は12月決算のため、影響がほとんど現れていないという決算期ズレの問題もある。1月以降の都市封鎖に伴う販売台数の激減の影響は2021年3月期に大きく影響することになる。

 会見で豊田章男社長は「新型コロナはリーマン・ショックよりもインパクトが大きい」と危機感をあらわにしていた。リーマン・ショック直後の1年間では、販売台数が135万台、率にして約15%減少したが、今期(2021年3月期)は前年比約20%減に相当する195万台の減少を見込んでいる。リーマン・ショック後は円高の影響も重なり、4610億円の営業赤字に転落したが、今回は5000億円の黒字確保を見込む。

phot リーマン・ショック後は円高の影響も重なり、4610億円の営業赤字に転落した
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.