コロナ不況に「がんばれ日本!」が、まるっきり逆効果になってしまうワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2020年05月19日 08時27分 公開
[窪田順生ITmedia]

考え方の根底にガンバリズム

 ご存じのように、日本はバブル景気以降、「失われた20年」という成長が停滞する時代に突入して、気がつけば先進国のなかで唯一、経済成長を果たしていない国になってしまった。当然、財政も最悪だ。「いや、それは真っ赤なうそで、国債のほとんどを国内に抱えている日本は借金などゼロだ!」と主張する人たちもいらっしゃるが、もし仮にそうだったとしても国民の生活はどんどん厳しくなっている。

 賃金は先進国の中で最低の水準なので、消費は冷え込んでいる。低賃金労働がデフォルトなので生産性も断トツに低くて、イタリアやギリシャと並ぶレベルだ。さらに、相対的貧困率もOECD加盟国の平均を上回っている。日本製の温水洗浄便座を外国人に見せびらかせて「みたか! これがメイドインジャパンの底力だ!」なんて威張っていた間に、すっかり貧しい国になっていたのだ。他の先進国のように休業補償がバーンと払えないのがその証左だ。

 ならば、この日本経済のダメっぷりは、日本人がサボっていたせいなのかというともちろんそんなことはない。新型コロナで外出自粛が要請されても、組織でがんばるサラリーマンの多くが電車に揺られて定時出社したように、どの国の労働者よりも生真面目に働いてきた。

35歳以上のビジネスパーソンで、パワハラを受けたことがあるのは82%(出典:エン・ジャパン)

 労働時間に関してはそこまで際立って長いわけではないが、有給取得率は断トツに低い。では、休みづらいだけでヌルい環境でダラダラ働いているかというと、そんなことはなく、かなりハードなプレッシャーにさらされる。NHKも参加している国際比較調査グループ(ISSP)によれば、日本のパワハラ比率は25.3%と世界37カ国中第4位であり、主要先進国の中で際立って高い。そうなると当然、労働者の心もポキンと折れやすい。1998年以降、日本の自殺率はG7の中でトップとなっている。

 つまり、「がんばれ日本!」に代表される日本人のガンバリズムが、日本経済にほとんど良い影響を及ぼさないことは残念ながら証明されてしまっているのだ。むしろ、「がんばれ、がんばれ」と叫ぶことに一生懸命になるあまり、問題の本質を見誤らせて、トンチンカンな対応を招いて、事態を悪化させてしまっている恐れもある。

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