コラム
» 2020年06月05日 09時17分 公開

3重の苦しみ:「無断キャンセル」で飲食店を殺すな (1/3)

「緊急事態宣言終了は早すぎる」という声があるが、体力に乏しい零細飲食店にはもうぎりぎりのタイミングだったはず。何とか生き延びた店にもいくつか大きなハードルが立ちはだかる。「無断キャンセル」だ。

[日沖博道,INSIGHT NOW!]
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日沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。日本BPM協会アドバイザー。


 零細な飲食店は元々の利益体質が十分でないうえに財務余力の乏しさや跡継ぎ不在などのため、すでに多くの飲食店が全国で廃業もしくは倒産を余儀なくされている。そうした事態に陥ることを避けてなんとか生き延びた飲食店にとっては、本当に待ち焦がれた「営業再開」だ。

 でも再開すればしたで、悩ましい問題も生じる。飲食店の場合には食材費の占める割合(=原価率)は平均で3〜4割程度と言われるほど高く、しかも長期保存が効かないものが大半を占める。したがって営業再開後、どれほどのお客さんが来てくれるのかという難しい予想を大きく外すと痛手も大きい。

 予想を大幅に下回る来店客数だと食材在庫を無駄に腐らせてしまう可能性があり、逆に食材仕入れを絞り過ぎてしまうと「売り切れ」という機会損失というだけでなく、せっかく来店してくれたお客さんの満足度を下げるリスクを負ってしまう。

 それに加え、無断キャンセル(No show)という大問題がまだ解決されていない。昨年末の忘年会シーズンには相当議論を呼んでいたが、コロナ騒ぎで話題ごと吹っ飛んでしまった格好だ。

 書店にとっての万引きと同様、飲食店にとっての無断キャンセルほど腹立たしくやるせなく、そして経営に痛い仕打ちはない(ブログを参照)。飲食店にとって無断キャンセルは3重の苦しみをもたらす。

 第一に、消えた予約分だけ売り上げが蒸発する(これは通常のキャンセルでも同じ)。これだけでもがっくりくるのに、無断キャンセルの場合にはそれに大きな痛手が上乗せされる。

 第二に、失った売り上げを回復する手段がほとんどない。予約がなければ他のお客さんを受け入れるところを、予約が入っているがために断わらざるを得ない。それで「待てど暮らせど」客は現れないのだから、店の人は非常に悔しい思いをする。せめてキャンセルの連絡が前日にでも入っていれば当日の来店客を受け入れることができるのだから、非常に罪作りだ。

 第三に、仕入れた食材の多くが無駄になってしまう。予約客のために下ごしらえしていた食材、ましてや時間をかけて調理していた料理はことごとく無駄になってしまう。予約の内容次第では、仕入れただけで使われなかった食材は他の料理に転用できることもあるが、それもタイミングを外せば新鮮さを失って結局廃棄せざるを得ない。

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