新型コロナウイルスの影響で、多くのイベントが中止に追いやられている。ミュージシャンやタレントによるライブをはじめ、大勢の人が1カ所に集まる即売会や展示会なども軒並み中止や延期となっている。5月に開催が予定されていた世界最大級の同人イベント・コミックマーケットも史上初の中止となった。
コミックマーケットを筆頭とした同人即売会会場で見かけるのが、「コピック」と呼ばれる画材の物販コーナーだ。コピックとはイラストレーションなどの着彩に使用される画材の1つで、漫画家やイラストレーター、趣味で絵を描く人などに広く使用されている。
コピックは1987年にトゥーマーカープロダクツ(東京・品川)が開発し、現在358色にも及ぶ色数が展開されている。インクがアルコール塗料でできているため、彩色したものが早く乾くのが特徴だ。また、透明なインクだが油絵のように色を何色も重ねることが可能で、描く人が独自の色を表現することもできる。
この2つの特徴を併せ持つため、漫画家やイラストレーター、クラフト作家、法廷画家をはじめとしたプロや、趣味で絵を描く人からも愛され続けている。そのため、コピックは同人即売会会場でも欠かせないものとなっているのだ。
だが、新型コロナウイルスの影響で、コピックを販売する機会は失われている。一方でTwitterでは、コロナ禍を吹き飛ばすようなコピックにまつわるハッシュタグが多く投稿されている。「#コピックアワード」と付けられたものもその1つだ。
「コピックアワード」とはどんなイベントなのか。トゥーマーカープロダクツで海外営業を担当する樋口毅さんはこう説明する。
「2017年から当社主催で開いている作品コンテストで、20年の今回で3回目を迎えます。コピックを用いて制作されたオリジナル作品であることが条件で、作品は絵画やイラストレーションだけでなく、立体のものなど幅広いジャンルの作品を受け入れているのが特徴です」
コピックアワードは、コピックの発売30周年を記念して2017年に企画・開催したのが始まりだ。
「これまでコピックをご愛用いただいている世界中のコピックユーザーの方々に、国籍を問わず参加してもらえるようなイベントをしようということで、『コピックを使っている作品ならなんでも応募可能』という内容のコンテストを開始しました。
絵を描く手段にデジタルデバイスを使うことが当たり前になった世の中で、あえてコピックを選んでいただいている方々への感謝を伝えつつ『コピックならではの表現や可能性がまだこんなにある』ということを、コピックを知らない人も含めより多くの方に知っていただきたいというのが目的です」(樋口さん)。
現在「コピックアワード2020」の作品を募集中で、その様子はWebサイトでも見ることができる。2回目は19年に開かれ、世界中から約2100点の応募があった。国内からの応募は全体の半分ほどで、残りは台湾や韓国といった東アジア、米国やブラジルといったアメリカ大陸、欧州など、世界中からの応募がある。賞金もグランプリで3000“ドル”となっており、国際色豊かだ。
審査員の豪華さも特徴だ。19年の審査員は、世界的ファッションデザイナーとして知られるコシノジュンコ氏や、「神風怪盗ジャンヌ」など人気少女漫画を手掛ける漫画家の種村有菜氏、手塚治虫の娘で手塚プロダクション取締役を務める手塚るみ子氏などが務めた。
今回の2020年は、「DEATH NOTE」「ヒカルの碁」の作画を手掛ける漫画家の小畑健氏、「ツモリチサト」のファッションブランドで知られる、デザイナーの津森千里氏、雑誌「美術手帖」の総編集長を務める岩渕貞哉氏などが担当している。
応募作品や過去の受賞作品を見ても、同人即売会では多く見られる、漫画やアニメのような絵はどちらかといえば少ないのが特色といえる。立体感あふれる写実的な絵や、ピカソの代表作「ゲルニカ」のように、キュビズムのような絵画まで、実に多様だ。美大生が描いたのではないかと思わせる作品も多い。
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