新型コロナの影響も多大!? 日本における新リース会計適用に向けて、早期に準備する必要性とは

新型コロナの感染拡大を受け、国際会計基準審議会(IASB)はリース契約のレント・コンセッション(賃料の免除・支払い猶予など)に関する免除規定を発表した。その内容とは。また、日本企業への影響は。

» 2020年07月14日 10時00分 公開
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 日本の会計制度にも、グローバル化の大波が押し寄せている。それは、日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が19年3月、借手におけるリース取引のすべてを原則、オンバランス計上する新会計基準の開発で合意したことからも端的に見て取れる。

 プロシップのシステム営業本部副本部長の巽俊介執行役員は、「ASBJでは以前から日本基準と国際基準であるIFRS(International Financial Reporting Standards)との溝を埋めるコンバージェンスを検討してきました。今回の合意は即ち、国内リース会計のIFRSに準拠するかたちへの見直しを意味します。これを基に、近い将来、最新基準のIFRS16号(IFRS16)に類似した新リース会計基準が国内企業に適用されることを指します」と話す。

 このように、IFRSは国内会計基準とすでに浅からぬ関りがある。そんなIFRS16でこの5月、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を踏まえた免除規定が新たに設けられ、話題を集めたことをご存じだろうか。それが、IFRS16でのリース契約のレント・コンセッション(賃料の免除・支払い猶予など)に関わるものだ。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

新型コロナ対応の支援に向けたIASBの“一手”

 新型コロナウイルスによって各国で外出制限や営業自粛などの行動制限が実施され、現在、事業継続に向けて各種不動産リースの賃料免除など、契約内容の見直しが広く行われている。

 こうした中、IFRS16の新たな基準が策定された背景には、契約内容の見直しがIFRS16の「リースの条件変更」に該当すると、非常に煩雑な作業が発生してしまうことがある。基準通りの会計処理では、割引率を見直してのリース負債の再測定や、従前のリース負債計上額との差額をBS調整額として会計処理を行う必要がある。

 「IFRS16には『契約が1年未満の短期リース』と『少額資産』の2つのリース資産に関する免除規定も設けられています。ただ、それらを除いても、企業には不動産を中心とした多くのリース契約があり、原則論に則っていては新型コロナウイルスの混乱の中、企業の負担は一層増してしまいます」(巽氏)

 こうした指摘を踏まえ、国際会計基準審議会(IASB)は2020年4月、レント・コンセッションを受けた借手の会計処理に対して、簡便的な会計処理を可能とする公開草案を公表。5月28日、最終版となる「COVID-19関連レント・コンセッション(IFRS第16号の改訂)」を公表したのである。

プロシップのシステム営業本部副本部長の巽俊介執行役員

2021年6月までの支払いリース料が例外処理の対象に

 内容は次のようになる。まず、前提として対象となるのは「新型コロナウイルスを直接的な結果として発生したレント・コンセッション」だ。従って、以前から値下げや繰り延べ交渉を行ってきた契約は除外される。そのうえで、「リース料に生じる変更が当該変更の直前と比べて実質的に変わらないか、もしくは減少するようなものであること」「リース料の減額は、従来の支払期日が2021年6月までに到来するものに限定されること」「その他のリース取引条件に実質的な変更がないこと」の3条件のすべてを満たす契約に限り、簡便的な会計処理が認められる。

 免除規定は、20年6月1日以降に開始する事業年度から遡及的に適用できる。遡及的な適用により生じた累積的な影響額は、その期の期首利益余剰金残高、または、その他の資本の構成要素の調整として認識することとなる。

 では、レント・コンセッションにより会計処理は具体的にどう変わるのか。

図1 レント・コンセッションに伴う会計処理の例

 IFRSではリース契約締結時にまず使用権資産とリース債務をそれぞれ認識を行う。その後、支払いの都度「現金」と、対応した「リース負債」ならびに「支払利息」の仕訳処理を行う。図1に示す通り、毎月のリース料の支払いが月額100、そのうちの支払利息が20の契約では、普通に支払った場合、その3カ月の累計は、借方の「リース負債 300」「支払利息 60」、貸方の「現金 300」「リース負債60」となる。

 対するレント・コンセッションの処理のポイントは、途中で契約条件に変更があっても計上済みのリース債務額の見直しはせず、また、「支払利息」の仕訳処理も変えることなく、支払い時の「現金」を「変動リース料」などの雑収入科目に切り替えて調整する点だ。

 例えば、図1にある通り3月〜5月の支払いが免除された場合は、貸方の「現金 300」が「変動リース料 300」に置き換わる。繰り延べの場合には、支払仕訳を繰延べる一方で、リース債務が消滅したわけではないため、貸方の「支払利息 60」と借り方の「リース負債」の仕訳を行う。そして、繰り延べた金額を支払った月に、まとめて支払に関する仕訳を行うのである。

 「このような処理により、レント・コンセッションではリース負債の再測定や、使用権資産の調整などが一掃されているのです」(巽氏)

着実に進むIFRSとのコンバージェンス

 巽氏によると、国内のIFRS適用企業でも流通業や飲食業など多店舗を展開する企業ではレント・コンセッションに対する関心が高く、すでに利用に着手したところもあるという。

 一方で、IFRS未適用の大多数の日本企業にとって、レント・コンセッションによる直接的な影響はないが、一部では例外もあると巽氏は指摘する。ASBJが19年6月に公表した改正実務対応報告18号では、連結財務諸表作成における在外子会社などの会計処理の取り扱いについて、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならない」(連結会計基準17項)こと、さらに「当面の間は『IFRS』ないしは『米国会計基準』に準拠して作成された財務諸表を連結手続き上利用できる」(実務対応報告第18号)ことが明示されている。

 「この結果、IFRS16の改定は日本の親会社がIFRS未適用であっても連結対象の海外子会社を持つ上場企業にまで拡大し、レント・コンセッションの織り込みが必要なケースもあるでしょう。また、そうでない企業も、新リース会計基準への移行は着実に進んでおり、現行基準からの大きな変更が予想されるため、対応に向け情報収集を含めた準備をできる限り早期に始めるべきでしょう」(巽氏)

新リース会計の開発において議論されている6つのポイント

 新リース会計基準の策定にあたり、現時点で特に審議・議論を行うべき項目として挙げられているのが、以下の6つだという。

図2 新リース会計基準の論点

難航が予想される対応作業を円滑に進めるために

 対応を進めるには、ASBJでの議論状況などの情報収集を通じた新リース会計基準の精緻な理解が欠かせない。そのうえで、社内ルールや業務を見直し、さらに、業務を支えるシステムの改修という具合に順を追って進めることとなる。

 もっとも、作業は難航が予想される。事実、IFRS16対応に向け、多くの企業が社内で利用する借手の全リース契約の洗い出しや内容の把握などで苦労を強いられてきた。新リース会計への対応にあたっても、多くの企業が同様の事態に直面すると見込まれる。

 そこで頼れるパートナーとなるのが、IFRS対応の固定資産管理ソリューション「ProPlus」で豊富な実績を上げてきたプロシップだ。ProPlusの導入先は、20の国と地域における152社にも上る。

 ProPlusは、リース資産の管理はもちろん、契約ごとのリースの種類の自動判定や登録、自動仕訳、さらに、リース登録の「集中管理」や「分散管理」など、IFRS対応に必要な機能を標準で用意する。また、英語や中国語にも対応済みで、24カ国の税務基準にも対応済みで、これほど充実したIFRS16対応機能の固定資産管理システムはProPlusだけといっても過言ではない。巽氏は、「我々であればIFRS16のノウハウを基に、新リース会計基準の対応を多角的に支援できます。疑問点があれば、何なりと当社にお寄せください」と自信を隠さない。

 新リース会計への対応に向けた“知恵袋”として、プロシップは活躍の場を今後、さらに広げていく。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年8月6日