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» 2020年07月20日 07時00分 公開

21年3月末めど:「契約締結が遅れると、億単位の損失」 ヤフーが「100%電子サイン化」に踏み切る事情 (1/3)

ヤフーが取引先との契約手続きを21年3月末までに「100%電子化」することを宣言した。“はんこ文化”がまだまだ根強い日本で、どのように達成していく計画なのか。ヤフーのメンバーに尋ねた。

[高橋睦美,ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症対策の一環として、日本国内でも多くの企業でテレワークが広がった。一方で、どうしてもオフィスに出社しなければこなせない業務もある。その代表格が、契約書や請求書といった紙の書類への捺印(なついん)・製本といった作業だ。

 2015年ごろから「どこでもオフィス」という名称で、いち早くテレワークに取り組んできたヤフーでは、紙の契約書の捺印手続きも以前からデジタル化を進めてきた。そして、新型コロナウイルスの影響が長期化する可能性を見据え、取引先との契約手続きを21年3月末までに「100%電子化」することを宣言した。

 “はんこ文化”がまだまだ根強い日本で、契約書の100%電子化という目標はやや無謀にも思えるが、なぜあえてその目標に取り組み、どのように達成していく計画なのか。電子サイン化に取り組むヤフーのメンバーに尋ねた。

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「契約締結が遅れると、億単位の損失」

 実際に契約書の取り交わし業務を担っているヤフーの黒岩高光氏によると、同社では2年ほど前から、紙の契約書から電子サインへの移行に取り組んでいた。印刷や捺印、郵送にかかる手間やコストを省けるという理由ももちろんあるが、何より大きな理由は「スピード」だ。

 捺印や発送の処理自体は1日もあれば終わる。問題は、それが相手先に届くまでの時間だ。先方にいつ届くか分からなければ、先方からいつ返ってくるかも分からない。取引先が海外になると、下手をすればやりとりに月単位の時間がかかることもあり、契約書を締結するだけで貴重な時間を浪費してしまうことになる。

photo ヤフーの黒岩高光氏(コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部 オフィス・経営支援本部 経営支援部 部長)。取材はオンラインで実施

 「郵送や印紙代がなくなりコストダウンできることも確かですが、それで削減できるコストは年間で1億円にも満たず、言ってしまえばそんなにたいしたことはありません。けれど、契約締結の遅れによって事業のスタートが1週間、2週間と遅れていくと、億単位の損失になるケースもあります。そういうことが積み重なっていくと、年間で数十億円のマイナスになる恐れがありますし、逆に一日でも早ければ何千万円ものプラスになります。電子サインのメリットとして一番大きいのは、事業を早く進めていくことです」(黒岩氏)

 こうした考えから、黒岩氏が所属する経営支援部と法務企画室が一体となって、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環で契約書のデジタル化を進めてきた。

 ヤフーが取引先と取り交わす契約書は月に約1000通に上る。ヤフー法務企画室長の生平正幸氏は「最初に取引の多い企業を抽出し、ランキングの上位にある取引先から『電子サインにしていただけませんか?』と相談し、同意を得られたところから電子サインに切り替えてきました。この結果、全体の1割程度が電子化できています」と話す。

photo ヤフーの生平正幸氏(コーポレートグループ 法務統括本部 法務本部 法務企画室 室長)

 取引先数でいうと、3割程度が頻繁にやりとりのある大手の取引先で、残る7割は1回限りの契約で終わる小規模な店舗、ストアや個人事業主だ。「ストアや個人事業主は電子サイン化に対するハードルはかなり低く、快く受けていただくことが多いです。やはり大きな企業になればなるほど、先方の捺印に関する体制や規定関係の調整が必要になるため、先方の準備が整い次第切り替えるという形で進んでいます」(生平氏)

 このように徐々に電子サインを広げてきたヤフーだが、新型コロナウイルスの拡大は大きな転機となった。

 どこでもオフィスという形でテレワークには慣れていたが、オフィスへの出社を極力減らすことを考えたとき、最後まで残るのが、まだ紙で残っている契約書への捺印業務だった。経営支援部のメンバーはリスクを冒して出社しなくてはならない。その頻度を下げて週に1回程度の出社に抑えると、その分だけ契約処理が遅れる。事情は取引先も同様だ。

 「かくかくしかじかで、契約書原本の送付が遅れるかもしれません」と連絡すると、先方からも「いやいや、うちも同様なので、少し時間がかかります」と返ってくる。スピードを重んじるヤフーにとっては痛い状況だった。

photo ヤフーの高田益美氏(コーポレートグループ 法務統括本部 法務本部 法務企画室)

 そこで思い切って全面的に電子サイン化を推進することにしたのが、先日の「100%電子化」宣言というわけだ。ヤフー法務企画室の高田益美氏によると、「最近では取引先の方から『契約は電子サインでいいんですよね?』と、デジタル前提で尋ねられることも増えています」といい、電子化比率は2〜3割程度まで来ている。

スムーズに電子サイン化、ポイントは?

 ヤフーは2年ほど前から、海外でも実績のある「DocuSign」(ドキュサイン)を採用して電子サイン化を進めてきたが、移行に当たって、それほど大きな障壁は存在しなかった。というのも、ヤフー社内ではそれ以前から、稟議や各種申請にまつわる社内書類を全てデジタル化、システム化し、捺印を廃止していたからだ。

 加えて業務フローにも工夫を施していた。

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