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» 2020年06月10日 08時00分 公開

電子化を阻んでいた要因は?:GMO「脱はんこ」即断の背景 そのとき、社内で何が起きていたのか (1/2)

[山崎潤一郎,ITmedia]

 GMOインターネットグループが「脱はんこ」を宣言をした。1月末からリモートワークを推進する同グループだが、押印のために出社を余儀なくされる社員が一定数存在していた。GMOインターネットの会長兼社長でグループ代表も務める熊谷正寿氏がこのことを問題視し、4月15日にSNSで脱はんこを公言。直ちにグループ各企業の幹部に押印の実態調整を命じ、翌々日の17日には、次のような説明のプレスリリースを公開した。

  • サービスにおけるお客さまの各種お手続きから、印鑑を完全撤廃(印鑑レス)
  • お取引先とのご契約は電子契約のみとする(ペーパーレス)

 4月20日には、グループ幹部をオンライン招集してミーティングを実施、グループ内の調査結果をもとに「すぐに対応できない案件については期限を設定して対応を進める」「取引先など対外的な対応が必要なものは理解を得て対応をお願いする」という方針を共有したという。

photo 4月20日はグループ幹部をオンライン招集してミーティングを実施。印鑑の完全廃止方針を徹底することを共有したという=画像はGMOインターネットのWebサイトより

 ここまでがGMOインターネットグループの脱はんこに至る概要だ。この流れを縦糸として、脱はんこに至るまでの事象を織り込みながら時系列で振り返りたい。

はんこの電子化を阻んでいた要因

 GMOクラウドは4年前に、電子契約サービス「GMO電子契約サービスAgree」(現「電子印鑑Agree」)の提供を開始。これを機にグループ各社の社内でも脱はんこ=署名の電子化を進めていた。GMOクラウドの牛島直紀氏(ソリューション事業部 電子契約サービス推進室)は「グループ各社では、はんこ(署名)の電子化を推進し、置き換えが可能な部分は既に完了している。しかし取引先など対外的な領域では、押印が必要な案件が残っている状態だった」と明かす。

 取引先などに、電子化を提案しても「はんこが前提の業務フローを変えることになるので社内調整が難しい」などの理由で実現に至らないことが多かった。相手がいる場合は、企業間のパワーバランスが関係するので、断られるとそれ以上無理はいえないことも多いという。

 人々の意識や慣習も電子化を阻む要因として挙げられる。「大切な書類には押印が必要」というのが慣習の中で常識化されている。この常識を覆すのは、一朝一夕では難しい。電子化による、効率化やコスト削減効果などをロジカルに訴えても、エモーショナルな部分で拒否されてしまっては、如何(いかん)ともし難いのだろう。

 しかし2月以降、コロナ危機の到来で人々の意識が大きく変化した。リモートワークを導入する企業が増加したことに伴い「3月には、電子契約サービスの加入者が前年同月比で約3倍と急増した」(牛島氏)という。コロナ禍という異常な状況が、人々の意識の中に巣くう常識に疑問符を突きつけ、はんこに関する価値観を変化させたのだ。

 とはいえ契約の類、銀行系、証券系など一部の対外的な書類では依然として押印が必要な状況を簡単に変えることはできない。リモートワーク期間中にGMOインターネットグループ内で実施された社員アンケートでも、押印のために出社しなければならない現実が多数残されていることが判明したという。

photo リモートワーク期間中、従業員から「紙ベースの業務に支障がある」などの声が上がったという=GMOインターネットが2月末に発表したアンケート結果より

「しょせん民民の話」は本当か?

 事態が大きく動いたのは、竹本直一IT担当大臣の会見での一言がきっかけだった。はんこ文化がテレワークの妨げになっているとの指摘に対し、竹本大臣は「役所の届け出はデジタル化が進んでいる。民間と民間で話し合ってもらうしかない。しょせんは民民の話」(大意)といった趣旨の発言をした(関連記事)。

 この発言を受け、熊谷社長が「決めました。GMOは印鑑を廃止します」とSNSに投稿。グループ全体で社員数6000人を擁する東証一部上場企業の代表者が脱はんこを公言した瞬間だ。

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