当初のオープン予定は3月17日。J-WAVEでは準備をほぼ終えつつあった2月末に、オープン延期を決断せざるを得なかった。その後、休業期間は4カ月に及んだ。
「NIHONMONO LOUNGE」では、中田氏が厳選した日本酒と高級レストランの料理を提供する。料理を出すレストランは週ごとに変わる。普段は酒と料理を楽しめば3万円程度はする高級店が「NIHONMONO LOUNGE」のために用意した限定メニューを、一皿2000円程度で販売しているのだ。一皿の値段は高めのランチと同じ程度に設定し、高所得者層をターゲットにしている。
「料理は完成度の高い、純度の高い一品一品を用意しました。値段的には少し高めですが、値段以上の価値があると思います。毎週来ても違うメニューが楽しめますし、名店の一皿がそれくらいの値段で味わえるようにして、特別な日に使ってもらうことも想定しています。優れたものを味わえる間口が広がると考えています」
会場ではJ-WAVEならではの演出が計画されていた。大きなスクリーンで国内外のショートフィルムを上映するほか、特設ステージではアーティストのライブを予定していたのだ。エンターテインメントとともに日本酒と料理を販売できる空間になるはずだった。
しかし、オープンの延期により、すでに準備されていたステージと音響設備は使われない状態になった。この広い空間を使って、休業中でも何かできないかと考えたのが、無観客ライブだった。
J-WAVEでは、新型コロナの影響によって多くのライブイベントが中止となるなか、「大好きな音楽を、アーティストを、ライブハウスを応援したい」というスローガンを掲げ、「♯音楽を止めるな」プロジェクトをスタート。その一環として「J-WAVE NIHONOMONO LOUNGE」で無観客ライブを開催し、生中継でリスナーに届けた。
「無観客ライブの開催は急きょ決めましたが、69ものアーティストに参加していただきました。この場所はスタジオとして考えると、まったく密ではありません。広いのでつばきが飛ぶことも意識しなくていいし、生歌を演奏する会場としては最高の場所でした。いろいろなアーティストが喜んで発信してくれて、大変感謝しています」
「NIHONMONO LOUNGE」のオープン後、客の前でのライブは回避せざるを得なかった。それでも、レストランがオープンしていない時間帯に、ライブの発信を続けている。
7月24日には、昨年は横浜アリーナで20回目の開催を迎えた夏の大型屋内ライブイベント「J-WAVE LIVE」を、「NIHONMONO LOUNGE」と有明の「東京ガーデンシアター」から生中継などで放送。新型コロナの影響が続く中、「NIHONMONO LOUNGE」は音楽をつなぐ貴重な場となっている。
「新型コロナの感染が拡大したことで、『もうライブは駄目だ』『ライブはなくなってしまうかもしれない』とみんなが思っているときでも、ここからライブの発信を続けました。リスナーから『勇気をもらった』『元気をもらった』という声が届いて、アーティストも希望を感じたと思います。
少し不自由な状態は続いていますが、いずれは酒を飲みながら音楽を聴けるようになるためのファーストステップではないでしょうか。この場所でみんながつながり合えて、希望が見えるようになればいいなと思っています」
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