人材派遣大手のパソナグループが、東京にある本社機能の一部を淡路島に移す。経営企画、総務、財務経理、広報などに従事する約1800人の中から約1200人を、2023年度末までに段階的に移す予定だ。9月頭にこの計画が発表されると、ネット上には驚きや心配の声があふれた。
中には「島流しでは?」といったネガティブな意見も目にするが、筆者がパソナの“中の人”にインタビューをして感じた、ポジティブな面にも光を当てたい。働き方を含め、あらゆる価値観が大きく変化したコロナ禍で、CSR(企業の社会的責任)が求められる大企業のあるべき姿を実践している部分も多々あるのではないか、ということだ。
パソナグループ副社長執行役員の一人で、本部移転プロジェクト副総本部長を務める渡辺尚氏に、このプロジェクトが目指すところを聞いた。
今回の本社機能移転について語る前に、次の事実を押さえておきたい。現在、パソナグループの本社が入っている東京・大手町の日本ビルディングは、三菱地所の再開発エリアに指定されており、21年度の解体が決定している。そのため、この場所からの移転は決定事項だった。そして、もう一つ、本社機能の全てを淡路島に移すわけではなく、東京と淡路島に分散させるということだ。
移転が決定している中でコロナ禍がやってきた。渡辺氏は「以前から本社機能を東京に一極集中させてよいのか、という疑問があった。今回のようなパンデミックや自然災害を考えると、リスク分散の必要性を痛感する」と明かす。
コロナ禍で「本社機能を分散させても、オンラインで滞りなくビジネスを回せることが分かった」(渡辺氏)という点が、淡路島移転を後押しした。
ただ、分散させるにしても、なぜ、淡路島なのだろうか。東西に分けるのであれば、東京と大阪を考えるのが普通だ。これに対し、渡辺氏は「淡路島には、地の利がある。地方創生事業の一貫として08年から進出しており、各種施設で既に約350人の従業員が働いている」と説明する。
筆者が気になるのは、異動を迫られる従業員の反応だ。家族の都合などで転勤が難しい人もいるだろう。
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