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» 2020年09月07日 07時00分 公開

有識者に聞く:「リモートワークは、ジョブ型雇用にすればうまくいく」は本当か? (1/3)

メンバーシップ型・ジョブ型雇用それぞれのいい面、悪い面は何か。これらの分類を提示した本人、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏に話を聞いた。

[リクルートワークス研究所]

 在宅勤務において適切に業績管理ができない、成果を評価することができないのは、日本企業の雇用がメンバーシップ型だからだ。今こそ、ジョブ型に移行すべきだ。昨今このような言説を、メディアを中心に見かけることがある。

photo 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長 濱口桂一郎氏

 これに対し、メンバーシップ型、ジョブ型という分類を提示した本人、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏は違和感を隠さない。「個人の仕事の進捗が見えない、チーム連携がしにくい、評価がしにくいなど、今企業で生じている課題は、確かに個人別に仕事が切り分けられておらず、課やチームに仕事が割り振られていることが背景となっているものが多いのは事実でしょう。しかし、それらの課題が、全てメンバーシップ型であるために生じる課題でありジョブ型にすれば何もかも解決される、というように短絡的に考えるべきではありません」と、濱口氏は話す。

 濱口氏がそもそもメンバーシップ型・ジョブ型という言葉を作ったとき、「どちらかが一方的にいいもの・悪いものという価値判断的な意味を込めたことはない」(濱口氏)というのだ。

リクルートワークス研究所『Works』

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 『Works』は「人事が変われば、社会が変わる」を提唱する人事プロフェッショナルのための研究雑誌です。

               

 本記事は『Works』161号(2020年8月発行)「オンライン化による課題 その本質とは何か」より「視点2:ジョブ型にすれば解決するのか」を一部編集の上、転載したものです。


それぞれ時代や状況に応じたいい面・悪い面がある

 ジョブ型雇用を、いま一度おさらいしよう。濱口氏は、「ジョブ型とは米国の自動車産業の工場労働者が典型で、その職務・労働時間・勤務地が限定されていることが大きな特徴」だと言う。「近代以前は、たとえミクロなタスクであってもその時々の契約によって個人が請け負う形が一般的でした。そうしたミクロなタスクをまとめて“ジョブ ”と呼び、請負のような形ではなく雇用の形をとるようになりました。これによって働く人々の身分が、ジョブによって保証される安定的なものになるというメリットがあったのです」(濱口氏)

 しかし、工場労働者におけるジョブ型は、そのジョブがあまりにも事細かに細分化され、硬直性が高いことでも知られる。「厳格なジョブディスクリプションによって、これは自分の仕事、そちらは隣の同僚の仕事、と明確に線引きされています。線引きされたジョブをわずかでもまたいではならないのがルールで、例えば、管理監督者がごみを拾ったといって組合から指摘が入るのが本場のジョブ型です」(濱口氏)

 そのようなジョブの線引きの発想をホワイトカラーにも適用し、雇用契約というのは契約の定めるジョブの範囲内でのみ義務を負い、権利を有するという発想が一般化し、ジョブ型の労働社会が成立した。「おおむね20世紀半ば頃までに確立したといわれています。欧米社会において、企業は上から下まで“ジョブの束”でできているのです」(濱口氏)

 一方、同じ時期、日本企業で成立していたのがメンバーシップ型雇用である。職務も労働時間も勤務場所も契約で限定されておらず、無限定、すなわち使用者の命令で臨機応変に変え得る雇用の在り方だ。メンバーシップとは、企業という“共同体”のメンバーになるという意味であり、企業はいわば“将来にわたって一緒にやっていくという約束”によって束ねられている。1990年代初めまでこの日本独特の雇用の在り方は、欧米企業のジョブによって規定される働き方よりも、人々が主体的にフレキシブルに働くメリットがあるとたたえられてきた。しかし、1990年代以降、無限定の働き方のほころびがさまざま露呈したのは多くの人の知る通りだ。

 「当たり前のことですが、時代時代によって求められるもの、適合するものが異なります。メンバーシップ型、ジョブ型の特性が変わらないにしても、そのときに置かれた社会環境や状況のなかで、その特性がメリットになることもあれば、場合によっては適合できずにマイナスになることがあるのです」(濱口氏)

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