2000年代後半から14年ごろまで続いた業績不振から構造改革を終えたソニーは、15年に社内公募制度を強化する「FA制度」「キャリアプラス」「キャリア登録」を導入した。
従来の「社内募集」と合わせて毎年およそ200〜300人が希望して異動している。このように自発的なキャリア意識を持った人材が活発に社内を行き来することは、近年のソニーの好業績の土台になっているのではないだろうか。
最近、兼業や副業を推奨する企業も増えてきている。
そんな中、15年に社内兼業制度の「キャリアプラス」を導入したソニーは先駆者と言えるだろう。一般的に、兼務は会社が任命する。一方、ソニーのキャリアプラスでは社外での活動と同じように、本人がやりたいことに応募して兼務できる点が特徴的だ。
兼務にかける時間の割合は30%を一応の基準としている。兼務している社員の正確な比率は算出していないが、このような制度ができる前からソニーでは兼務が多かったそうだ。
現在は累計で200人以上がキャリアプラスを利用していて、定期的に月に数件、多いときは30件ほどの新規募集があるという。
これらの制度の導入を率いた大塚康氏(ソニーグループ EC人事部 統括部長)は「完全な異動にはある種の勇気が必要ですし、受け入れる職場にとっても、それなりの覚悟と予算が必要です。そこで、もうちょっとライトに、社員の可能性と職場の足りない部分を埋めることを両立できないかと思って導入しました」と話す。
例えば、新規事業は予算が厳しいことがある。事業を継続できるかどうかもはっきりしない。多くの人が完全に異動してくると、それがリスクになる。そういった場合に、キャリアプラスを使って週に1〜2日、新規事業に時間を割くといった使い方ができる。コロナ禍でオンラインで仕事ができる環境になり、兼務はよりやりやすくなった。
「こんな時代が来るとは予想していませんでしたが、こういう時代にマッチしていくように思います」(大塚氏)
キャリアプラスを利用して、アニメ好きを募集した求人もあったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング