東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。
プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。前編に続き、ゲストは5月にパナソニック CIO(最高情報責任者)に就任した玉置肇氏。
P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険とグローバル企業のCIOとしてキャリアを積み、ついに歴史ある日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に挑む玉置氏が語る、日本経済再活性化の糸口とは。
長谷川: 日本以外の国でも、DXの必要性が問われているのでしょうか?
玉置: DXという言葉を使っているのは日本だけですね。Digital TransformationのどこにもXは入っていないでしょう。でも、僕はDXに関して明確な定義を持っています。
1つは、モジュール化です。モジュール化とは、もともとある部品のユニットを組み合わせることで新しいプロダクトを作り上げることを指します。そのプロダクトのために一から部品を設計することはありません。
テレビを例に取ると分かりやすい。昔のブラウン管のテレビはたくさんの部品で構成されていて、部品一つ一つの性能を上げることに各社がしのぎを削っていました。しかし、今の薄型テレビは、筐体、液晶パネル、マザーボード、ほぼこの3つのパーツしかありません。
モジュール化によって、いかに安く効率的に組み立てるか、いかにブランド価値を付けて売るかという勝負に変わりました。日本の家電メーカーはこの波に乗り遅れてしまった。
長谷川: 世界のテレビ市場は韓国メーカーがトップ、中国メーカーが追う状況。海外のホテルでは日本製のテレビを見かけなくなりましたね。
玉置: 日本製のテレビも、マザーボードはLG製だったりします。これは、LGがモジュール化にきちんと追従してきた結果です。
DXの定義、2つ目は業務効率化。手のひらのデジタルデバイスをどう使うかです。僕は、モジュール化と業務効率化を念頭に、新しいビジネスモデルや業務プロセスを構築していくことが、DXだと思っています。
でも、ほとんどの企業はそこまでいっていません。なぜか。足元のレガシーシステムが足かせになっているのです。モジュール化と業務効率化の前段階として、レガシーシステムのモダナイゼーションも「DXの準備」と呼んでいいと思うんです。あくまで「準備」が付きます。僕がこれからパナソニックでやることも、DXの準備と言っていいと思います。
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