「リモートワークは、ジョブ型雇用にすればうまくいく」は本当か?有識者に聞く(3/3 ページ)

» 2020年09月07日 07時00分 公開
[リクルートワークス研究所]
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元に戻るのは持続不可能だから

 問題は、「組織のありようは、そう簡単には変わらないこと」(濱口氏)だ。「多くの企業がジョブ型に移行すると言ったところで、新卒入社時から仕事を切り分けて与える企業はほとんどありません。日本企業では、何もできない新入りが上司の指示で何かしたり、先輩に教えられたりしながら徐々に成長していく。ですから、この4月に入社していきなりリモートワークに突入した社員の育成は機能していない。これが象徴的ですが、リモートワークを早々に止める企業があるのは、それが現場では持続不可能だと確信しているからでしょう」(濱口氏)

 一方で、濱口氏は「この組織のありようは、リモートワークとは異なる文脈で、早々に変わっていかなければならない」とも言う。「現在、日本企業は、中高年層が組織のなかに増えていくという別の課題を抱えています。日本企業が続けてきた空間を浮遊する仕事を誰かがやる、というやり方は、新しいことをどんどん吸収して成長する若手には適合的であっても、中高年層には難しい。年を重ねても生産性高く働けるようにするには、ある一定の年齢で一定のジョブを自らの領域とし、そこでプロとして活躍していくというキャリアの道筋を作っていく必要があります」(濱口氏)

 今回のコロナ禍で、突然のリモートワークによってある特定の職種、特定の職場で「ジョブを個々に切り分けたほうがうまくいく」と実感できたケースが局地的・散発的に起こっている。それはどういう職場や仕事なのか、つぶさに見ていくことで変化を促すきっかけになるのではないか。

 本記事は『Works』161号(2020年8月発行)「オンライン化による課題 その本質とは何か」より「視点2:ジョブ型にすれば解決するのか」を一部編集の上、転載したものです。

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