今、この時はどういう状況かといえば、チームのメンバーがバラバラな場所で非同期に仕事を進めるリモートワークが増加しようとしている。「リモートワークを念頭に置けば、確かに一人一人にジョブが切り分けられているほうが適合的」だと濱口氏は言う。
「ジョブの塊が組織の空気中を漂っていて、マネジャーがメンバーを見回して、『○○さん、やってよ』と言えば、部下の誰かにそのジョブがくっつく、という日本企業の仕事の進め方は、時間と空間を全員が共有していてこそ可能になります。リモートワークのもとでは適合せず、マイナス面が目立つのは事実でしょう」
しかし、多くの言説が示す「ジョブ型にすれば成果が測りやすくなり、評価がしやすくなるかというのは別の議論」(濱口氏)だ。「“ジョブ型=成果主義”という誤解があるのだと思います。ジョブ型には成果主義の概念は入っていません。例えば米国のジョブ型社会でも、経営管理的な上位のジョブであればあるほど成果で評価される割合が高くなりますし、下位のクラーク的なジョブはほぼ時間給。彼らのジョブディスクリプションは、決められたことをきちんとやることですから、それは当然のことなのです」(濱口氏)
ただし、「ジョブが明確でないと成果を何で測るのかが決められないから、成果主義が回らないのは確か」(濱口氏)だと言う。成果で評価したいと思うのならば、ジョブと同時にそのジョブにおける評価の基準を明確にする、という別の議論が必要である。一足飛びに組織全体をジョブ型に移行するというよりは、まず、一人一人のジョブそのもの(仕事の範囲、役割、責任)を明らかにすることを検討すべきだろう。
「リモートワークにおいては、ジョブが明確という前提が必要です。実態としてその前提ができていないまま、成果を追い求めていくと、結局は昔ながらの情意考課の域を出ず、取り組み姿勢を評価してもらおうとする社員の長時間労働につながりますし、上司は部下の一挙手一投足、何時何分に何をしていたかを見ようとするでしょう」(濱口氏)
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