「日本の宝・中小企業」をイジメる菅総理は、「悪」なのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年09月22日 08時13分 公開
[窪田順生ITmedia]

社長は「雇用主」&「恩人」

 一般的に、社長と社員数名という家族的な雰囲気な会社では、賃上げだ、労働条件の改善だなどというシビア話し合いは行われることが少ない。「信頼関係で成り立っている」と言うと聞こえはいいが、悪く言えば、労働基準法や最低賃金法を度外視したブラック経営を、人間関係でうやむやに押し通せる側面があるのだ。

 例えば、そのような小さな会社で、残業代未払いや最低賃金ギリギリで働かされる従業員が、「社長、これじゃ生活できないので少し給料を上げてもらえませんか?」と頼んだとしよう。しかし、社長から「すまん、今は厳しいからもうちょっと我慢をしてくれ」と言われたら従業員は労基に駆け込むだろうか。不満をグッと抑えて受け入れるのではないか。社長は「雇用主」である一方、自分を拾ってここまで育ててくれた「恩人」でもある。そんな父や兄のような存在が困っているのなら、少しでも役に立つのが人の道だということで強硬な姿勢に出られないのだ。

中小企業の給与はどうなる? (写真提供:ゲッティイメージズ)

 人件費に頭を悩ます経営者側からすれば、これほどありがたい話はない。また、性悪説に立てば、この関係性を悪用する恐れもある。つまり、実際は経営的に余力があっても、「ウチは厳しい」「大きな仕事が入ったら還元する」と情に訴えて従業員の人件費を圧縮することもできてしまうのだ。

 先ほども申し上げたように、苦しい状況の中で必死に頑張る中小経営者の方もたくさんいらっしゃる。しかしその一方で、従業員に低賃金重労働を強いながら、おいしい思いができるということで、あえて会社を大きくせず、中小企業にとどまっている経営者も実はかなり存在しているのだ。

 それがうかがえるのが、昨年の消費増税時に起きたこの現象である。『消費増税のポイント還元対象狙い? 小売業「中小企業化」相次ぐ』(SankeiBiz 2019年8月21日)

 ご存じのように、昨年10月の消費増税に伴って、国が税金を使ってポイント還元事業を行ったが、あれは大企業は関係なく、中小企業が対象だった。そこで、どうにかこの制度の恩恵を得ようと、スーパーなどの小売業で資本金を5000万円以下に減らして法律上、中小企業になる動きが広がった。実際、帝国データバンクによれば、今年1〜7月に減資したのは412社に達し、前年同期の252社から6割以上増えたという。

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