“延焼”続くゆうちょ銀行、なぜ被害をすぐに公表しなかったのか 対応遅れに、池田社長「反省している」被害総額6000万円(1/2 ページ)

» 2020年09月24日 19時54分 公開
[秋山未里ITmedia]

 ゆうちょ銀行の口座から、複数の決済サービスを使った不正出金の被害が相次いでいる問題で、同行の池田憲人社長と田中進副社長が9月24日、記者会見で謝罪した。記者からは被害公表やサービス停止などの対応の遅れが指摘され、池田社長は「少しでも早く公表すべきだった」と回答した。

photo ゆうちょ銀行の池田社長=9月24日、記者会見で撮影

 ゆうちょ銀行によると、決済事業者と連携する即時振り替えサービスを悪用した不正出金の被害は380件で、被害総額は約6000万円(24日午後時点)。16日時点の109件、約1811万円から拡大した。同行が発行するデビット・プリペイドカード「mijica」でも、会員間の送金サービスを悪用した被害が54件発生し、被害総額は332万2000円(24日時点)という。各サービスは16日に一部をのぞき、チャージ機能を停止している。

公表・対応に遅れ 「反省している」と池田社長

 11日時点で、池田社長はドコモ口座以外でも被害が起きたことを知っていながら、公表しなかったという。池田社長は24日、このことを謝罪をした上で「件数公表の段取りが付いておらず、ドコモの件について聞かれたので(当時は)そのことには答えた。しかし総務大臣にも報告していたため、(ドコモ口座以外の被害についても)少しでも早く公表をすればよかったと反省している」と釈明した。

 ドコモ口座以外でも被害があった事実は、15日に高市早苗総務大臣(当時)が閣議後の記者会見で明らかにした。翌16日には、ゆうちょ銀行が記者会見を開き、田中副社長がドコモ口座以外も含む、決済事業者7社で即時振り替えサービスを悪用した被害があったと報告した。

photo ゆうちょ銀行の田中副社長=9月24日、記者会見で撮影

 この会見の時点で田中副社長は、ゆうちょ銀行が発行する「mijica」でも被害があると認識していた。しかし「その時点では、即時振り替えサービスとは違う話であるとして触れなかった。mijicaの件は(mijica会員内に)閉じている中の被害で、被害者への個別の謝罪対応も可能だと考えた」(田中副社長)と説明した。

 同行によると、mijicaの不正送金被害が初めて発覚したのは8月9日。不正利用者のアカウントは判明した時点で停止しているという。しかし、初めに対策が取られたのは9月11日で、mijicaで使える送金金額と送金回数を引き下げるという対応だった。その後も被害は発生し、16日に送金サービス全体を停止した。この点について、田中副社長は「(早い段階で)被害を公表、サービスを停止すべきだったと考えている」と振り返る。

 ゆうちょ銀行は、被害を公表する基準として、社会的な大きな問題であること、多くの顧客に影響が出ることの2点を挙げる。池田社長は、今回の被害がこれらに当てはまっているとした上で、「できるだけ早く開示しようとしたが、正確な精査をした上で開示をしたいと考え、対応が遅れた。反省している」と謝罪した。

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