宙に浮いた「TikTok」の運命は? まとまらない買収交渉の顛末世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2020年12月10日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

12月4日の期限までに合意に至らず

 TikTokを巡っては、つい最近、こんなニュースが報じられたばかりだ。かねてより話題になっていたTikTokの米事業売却について、12月4日の期限までに売却交渉で合意に至っていないことが判明したのである。

 結局、期限は過ぎてしまったが、米政府は交渉期限を延期しないとしており、引き続き交渉は行われるという(参考記事)。ただ、その間はアプリも引き続き利用できる状態になっており、結果が見えない中途半端な状態にある。

 そこでまず、これまでの顛末(てんまつ)について少し振り返りたい。

 全ての始まりは、2018年8月にTikTokの親会社である中国IT企業バイトダンスが、米国を中心に展開していた動画アプリ「Musical.ly」を買収したこと。この買収によって、TikTokは世界的な人気アプリとなるべく急成長を始めた。するとユーザーが急増していた19年末、米共和党議員らが、米国にとってその買収は安全保障リスクとなるのではないかと対米外国投資委員会(CFIUS)に調査を要請した。

 ちなみにCFIUSは、外国企業が行う買収などを調査するための政府委員会である。同委員会は、スティーブン・ムニューシン財務長官が議長となり、司法省や商務省などだけでなく、国防総省や国土安全保障省、ホワイトハウスの科学技術政策局長などがメンバーを務めて調査を行っている。

 その結果、トランプ政権はTikTokがスパイ行為につながる安全保障の脅威であると判断する。そして、20年8月にトランプ大統領が、バイトダンスに対する大統領令に相次いで署名。米企業がTikTokと取引できないようにしたり、TikTokに米国内でのビジネスを90日以内にやめるよう求めたりする大統領令を出すことになった。

 もっとも、米軍では大統領令より前にTikTokの使用リスクに警告を出しており、軍から支給されるスマートフォンでのTikTok使用が禁止されている。ちなみに、日本で人気の「ポケモンGO」も、米軍支給のスマホでは16年から使用禁止になっている。

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