飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2021年01月12日 10時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

アルバイトやパートで働く女性の7割、恩恵を受けず

 それがうかがえるようなデータもある。昨年10月、野村総合研究所が、コロナで休業を経験した労働者がどれほど休業手当を受け取っていたのかを調べた。正社員は62.8%、契約・派遣社員は49.6%と半数から6割はどうにか休業手当が受け取れているのに対して、パートやアルバイトで働く女性ではわずか30.9%にとどまっている。

パート・アルバイト女性の7割近くが休業手当を受け取っていない(出典:野村総合研究所)

 コロナ危機になってから多くの事業者が政府や自治体からのさまざまな補償や支援を受け取っているにもかかわらず、その恩恵をアルバイトやパートの女性の7割は、まったく授かっていない状況なのだ。

 労働基準法では、企業に対して正規、非正規を問わず休業手当の支払いを義務付けている。新型コロナによる休業に関しても、事業者側が「ウチは経営が厳しいんで無理ですわ」と開き直らないよう、国が休業手当の一部を補償する雇用調整助成金や、中小企業で働く人向けの休業支援金・給付金という制度をつくっている。

 ここまでお膳立てをしているにもかかわらず、なぜ「休業手当の不払い」が横行しているのか。

 アルバイトやパートという弱い立場の人たちを搾取するモラルのない経営者が世の中にあふれかえっているからだ。このような制度があることを知らない不勉強な事業者が多いのではないか。いや、支援金が足りないのだ、ケチケチしないでもっと大盤振る舞いすればいい。さまざまなご意見があるだろうが、根本的なところで言えば、「小規模事業者が多いから」だと筆者は考えている。

 日本企業の99.7%は中小企業というのは有名な話だが、厳密に言えば「中堅企業」は13.2%しかない。86.5%は「小規模事業者」である。「小規模事業者」は製造業などの場合は従業員20人以下、商業・サービス業は従業員5人以下。こういう小さな規模の会社の社長さんが、日本の経営者の87%を占めているのだ。

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