ご存じのように、日本の賃金は先進国の中でも異常なほど低い水準で定着している。大企業や中堅企業はそれなりに賃上げをしているが、日本企業の87%を占め、労働者の4分の1が働く「小さな会社」の低賃金が足を引っ張っている形なのだ。
一方、「小さな会社の社長さん」の中には高級クラブ通いや高級外車を経費扱いにして、いい暮らしをしている人も少なくない。国や自治体の支援で生活が豊かになった「小さな会社の経営者」はいても、「小さな会社で働く人」の生活はほとんどよくなっていないのだ。
「それは大企業が搾取しているからだ!」「いや、デフレが悪い」「安倍政権が悪い、いや、もっとさかのぼって小泉政権のせいだ!」など、この現象を誰かのせいにすることはいくらでもできる。が、データを見れば、もっとシンプルに「手厚い支援を、労働者ではなく自分たちの事業継続に使った」可能性のほうが高いのだ。
「中小企業白書 小規模事業者白書 2020年版」によれば、2012年から16年にかけて存続した295万社の中で、「規模変化無し」だったのは95%にあたる281万社だった。ちなみに、その中で小規模事業者は247万社である。
これだけ時代が大きく動いて、事業環境が目まぐるしく変わっていく中で、日本の小規模事業者の圧倒的多数は成長をするでもなく、衰退をするのでもなく「現状維持」している。この奇妙な現象は、国や自治体の「支援」を成長につなげて賃上げをするわけでもなく、会社の「延命」に活用しているからとしか説明できない。
つまり、日本で「労働者の低賃金」が固定化されてしまっているのは、低賃金労働者が多く働き、日本企業の8割を占める「小さな会社」が国などの支援で「現状維持」に流されていることが原因のひとつである可能性が高いのだ。
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