森会長退任問題が暴露した、根性論組織の弱さリスク管理できない日本的組織(2/3 ページ)

» 2021年02月20日 07時51分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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名選手なら名監督なのか

 かつて名選手ではあっても監督で失敗した人は少なくありません。本来は別の機能である選手能力と監督能力ですが、とりわけスポーツの世界においてはとりあえず選手としての名声の高い人は、一度は監督職に就くのが一般的です。しかしそれが上手く機能しなかった例はたくさんあるのですが、現在でもこの流れは全く廃れてはいません。

 まあやっぱりスポーツの世界は組織論や経営管理論より根性論なのかなとも揶揄できそうですが、スポーツ界だけじゃなかったですね、功績と管理能力をごっちゃにしてしまうのは。今回の組織委員会会長問題ですが、そもそも失言で首相在任中もさんざん批判を浴びた森氏を会長に据えた組織委員会の責任はどう見てもあります。

 組織委員会公式サイトによれば、組織委員会を作ったのはJOCと東京都だそうです。それなら上位機関であるJOCや都はどうしたのと思いますが、残念ながらJOCの山下会長がこの事件でイニシアチブどころか、森氏を統制などできているとは思えません。小池知事は世論を巧みに読んで、態度や発言を変えているようですが、自身が収拾するような動きは見えません。

 これで組織として機能しているのでしょう。

「取締役」という名誉職

 スポーツ界だけでなく、日本社会には組織が組織として機能していない面は多々あります。かつて企業社会でも「取締役」は長年会社に滅私奉公で勤め上げた上がりのポストでした。大臣は長年与党で政治家を務めた栄誉でした。昭和の時代には何の知識も能力もなくとも「(官邸に呼ばれて)急に拝命した」と正直に言ってしまう大臣がいくらでもいました。

 しかしもう今のコンプライアンスの中で、こんな組織をないがしろにした配置は許されません。上場企業の取締役になれば株主代表訴訟を起こされるリスクもあります。大臣は強力な与党に所属しているだけで、能力に関係なく指名され、あっさりボロを出して即座に退任になる大臣も数々います。

 日本のダメ組織の典型的な例が組織委員会であり、名誉職としての取締役や大臣だと思います。能力や責任によって決められなければならない管理者を、組織への忠誠や貢献という意味不明な理由で充てた結果がのきなみ失敗するのだと思います。「余人をもって代えがたい」という理由で推戴された人物が機能したためしがないのはその証左でしょう。森氏や石原元都知事の周囲でもこうした意味不明理由が聞かれました。

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