このところ首都圏の新築マンション価格が異様なレベルまで上昇している。都内では数少ない物件をめぐって争奪戦となっており、タワーマンション(以下、タワマン)を中心とした高額物件が価格上昇を牽引している。タワマンについては「販売不振で崩壊する」といった記事があふれていたかと思えば、最近では「販売が好調」という記事をよく見かける。両極端な記事が氾濫しているのは、多くの国民がいまだにタワマンに心を揺さぶられているからだろう。
不動産経済研究所によると、2021年4月時点における首都圏のマンション販売価格は何と平均7764万円にまで高騰した。販売価格は10年以降、一貫して上昇が続いており、11年に4578万円だった販売価格は20年には6000万円を突破した。21年は年初からさらに価格が上がっており、2月は6380万円に、4月には一気に7000万円台後半になった。平均販売価格が7000万円台というのは異常な水準であり、まさにバブルといってよい。
4月については、20階以上の超高層物件が前年同月比で約3倍の販売件数となっており、高額なタワマンが価格を引き上げたことが分かる。つまりコロナをきっかけに、高級タワマンがまさに飛ぶように売れているのが市場の現実である。
では、コロナ危機で経済が打撃を受けているにもかかわらず、なぜタワマンの販売は絶好調なのだろうか。メディアでは中国人が買い漁っているとか、投機目的の購入ばかりで実需はゼロであるといった話ばかりが目に付く。投資目的で購入する人もいるし、その中には中国人も含まれているだろうが、分譲マンションの販売を支えているのは、今も昔も自己居住目的、つまり実需である。
テレワークの進展で都会から地方に転居する人が増えているという話をよく耳にするが、たいていが願望に基づいたうわさ話であって現実ではない。確かに20年には東京からの転出が増えたが、それはコロナ危機で仕事を失い、やむを得ず実家に帰るといったケースが大半である。首都圏全体では転入超過が続いており、首都圏の人口はコロナ危機とは関係なく増加が続いている。
一方でマンションの供給は、コロナ危機で工事が滞ったり、物流の混乱で資材が確保できないといった理由から減少が続いている。人口の流入に対してマンションの供給が不足している状況であり、持ち家を希望する人が少ない物件に殺到している状況だ。しかも、立地条件のよい低層物件はすでに開発され尽くしており、今、供給される物件の多くはタワマンにならざるを得ない。物件が足りず、供給される数少ない物件の多くがタワマンなので、(タワマンが良い悪いは別にして)売れるのは当たり前のことだろう。
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