平均7764万円! 経済が振るわなくても、タワマンが売れている理由“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2021年06月09日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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タワマンはそれ以上でもそれ以下でもない

 結局のところ、構造的な理由から今後もタワマンは売れ続けるという話だが、筆者は正直なところ、タワマンは終の棲家(すみか)としては完璧ではないと考えている(実際、筆者が所有している物件はすべて一般的なマンションでタワマンは一つもない)。

 しかしながら、人口減少とそれに伴う首都圏への人口流入、世界的な物価上昇というマクロ的な要因に加え、首都圏ではもはや低層マンションに適する立地がないという現実を考えると、今後も多くのタワマンが供給され、そして売れ続けると予想される。

 確かに大規模修繕など問題も発生するかもしれないが、仮にそうだとしても居住としてのニーズが存続する限り、たいていの問題は市場が解決してくれる。安易な気持ちで最初に入居した住人は、跳ね上がった修繕費に耐えられず、マンションを出て行くかもしれない。だが、マンションの絶対数が足りない状況では、値段が下がれば必ず買い手は現われ、リニューアルされた上で新しい購入者に販売されるので廃墟にはならない。大規模な物件であれば不動産投資ファンドがまとめ買いして、賃貸市場に転用することもあるだろう。

 つまりタワマンはベストではないものの、今後も都心部の主要な住居として機能し続ける可能性が高いのだ。

 一昨年の大雨では、あるタワマンの下水がストップするという出来事があり、異様なまでに世間の関心を集めた。ここまでタワマンでの出来事が注目されるのは、憧れややっかみがあるからと思われるが、先ほども説明したようにタワマンはいろいろな意味で住居としてベストとはいえない。だが、都心ではタワマン以外に解決策がないため、今後も売れ続けるし、資産価値も維持される可能性が高い。

 タワマンとはそうした存在であり、それ以上でもそれ以下でもない。どうしても持ち家がほしいならタワマンを選択肢に入れざるを得ないだろうし、それが嫌なら買わなければ良い話だ。もうそろそろタワマンに心を揺さぶられるのは卒業したほうがよいだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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