「いずれ日本に帰国して仕事することを考えているため、日本で標準的に使われているシステムに触れたいと考えて昨年参画した。フルリモート・フルフレックスで週2日程度の稼働でもOKという求人はとても珍しかった」と振り返る。
南さんは本業の始業前や夜、週末に業務を行い、週20時間ほど稼働する。主にプラットフォーム開発や、UI(ユーザーインタフェース)の改善などを担当し、Slackで日本のエンジニアとコミュニケーションをとる。
日本とエストニアとは6時間の時差があるが、ミーティングはエンジニアチームの責任者と主に2人で行い、お互いが辛くない時間帯で調整する。南さんは「日本の技術を学ぶことによって、自分の成長につながっている」と話す。当社の業務で得た収入はエストニアで確定申告しているという。
人材側にとって、海外に住みながら日本企業で働くメリットは、海外赴任の同行者がキャリアを中断しなくてよい点だ。一方、企業側は優秀な人材の確保というメリットがある。
フリーランスの人材サービス会社Warisの調査によると、配偶者の海外駐在に帯同する人の98%が女性だった。また全体の約6割が帯同によって仕事を辞めている。キャリアを中断した理由で最も多かったのは「自分が働いていた企業が海外での就業継続の仕組みがなかった」だった。Zoomなどのオンライン会議ツールや、仕事の進み具合を確認できるクラウドソフトなどデジタル化が進むことで、こうした問題は一定程度、解消できるのではないか。
リモートワークが広がることで、酒井さんのように、家族の海外赴任に同行する女性の就業機会が増えることは、日本の企業にとっても優秀な人材の確保につながる。また、南さんのように将来的に日本の企業で働くためのキャリア形成といった働き方も可能だ。年内には、当社の別のメンバーもベトナムで新生活をスタートするが、仕事を続ける予定だ。
代表である私自身、創業まで15年近く、毎日オフィスに出社するスタイルでしか仕事をしてこなかった。このためリモートワークで本当に会社が回るのか、特に組織としての連帯感が生まれるのか、という不安はあった。
しかし、この4年間やってみて分かったことは、物理的に同じ場所にいることより、お互い何を意識して、何を話すかということの方が実は大事だということだ。リモートワークは文字ベースでのやりとりが中心だと思われるかもしれないが、実は「ちょっと今からいい?」と5分だけZoomで話すこともでき、相手の顔や目を見てコミュニケーションをとることは十分にできる。
当社では、個人が仕事をする中で感じた「違和感」や「モヤモヤ」を飲み込まず表に出すこと、自分の得意なことだけではなく苦手なことを話し、お互いによく聞くことを大事にしている。
こうしたルールと日々の実践が、お互いの心理的安全性や、会社が目指すことと自分の重なりを感じるエンゲージメントも高めると考えている。
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