「格差の是正」へ舵 経産省の“画期的”提言が「コロナ禍で生まれた希望」といえるワケ「緊縮財政」路線からの転換点(4/6 ページ)

» 2021年06月25日 17時40分 公開
[森永康平ITmedia]
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コロナ禍で生まれた1つの希望

 コロナ禍で世界は大きく変わっている。米国はバイデン政権下において、コロナ対策としての「米国救済計画」で約1.9兆ドル(207兆円)支出することを決定した。さらには物理的なインフラ・研究開発などへの投資に2.2兆ドル(240兆円)、人的インフラへの投資に1.8兆ドル(196兆円)の追加的な財政出動も検討している。

phot 米国バイデン政権の成長戦略(以下、経済産業省「経済産業政策の新機軸〜新たな産業政策への挑戦〜」より)

 EUも単一通貨であるユーロの信認を守るために導入していた、各国にGDP比で財政赤字を3%以内に抑えることや、公的債務を60%以内に抑える財政規律をコロナ禍では凍結し、景気の下支えを目的として各国の財政出動を後押ししてきた。20年7月にはEU復興パッケージとして約1.8兆ユーロ(239兆円)の予算を計上した。

phot EUの産業政策

 極め付きは、先日開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)においても、経済再生に向けた各国の財政出動の継続が支持されたのだ。

 しかし、これまで散々欧米を憧れの対象として追従しては模倣していた日本が、本件についてはガラパゴス化を貫いているのだから救いようがない。だが欧米の財政政策を羨望のまなざしでみつめていたところ、経済産業省が「経済産業政策の新機軸〜新たな産業政策への挑戦〜」という資料を発表した。

 この資料の中で、コロナ禍による総需要の急減は低成長を恒久化する恐れがあるため、低インフレ・低金利の現況下においては財政政策によって総需要不足を解消し、マイルドなインフレを実現することを提唱しているのだ。これまでは経産省といえば、グローバル化や構造改革を推進してきた印象を持つが、今回の提唱内容は今までの戦略とは一線を画す内容となっている。

phot マクロ経済政策の新たな見方

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