市場は7割減! “スーツ離れ”を断ち切ることはできるのかスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2021年07月06日 09時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

スーツはよみがえるのか

 子どものころから「あの暑苦しそうな服を着ることなく生きていけないかな」と考えて、大人になってからそういう仕事ばかりを選んでいた筆者も、スーツ不要論にはまったく同感だ。が、一方でこの世の中には、スーツを愛してやまない方たちもたくさんいらっしゃることを忘れてはいけない。

 人生を豊かにするファッションとして楽しんでいる方もいるし、「暑かろうがジメジメしていようが、オレはここぞというときにパリッとしたスーツを着ないと、いい仕事ができてないんだ」と自身のパフォーマンスに欠かせないものだと考える方もいらっしゃる。

スーツの購入頻度は(出典:マイボイスコム)

 そのような人たちのことを思えば、個人的には興味ゼロながらも、社会全体としては「スーツ文化」をしっかりと守っていくことも必要ではないか、とも思うのだ。

 では、約10年で7割も減少した市場をどうすればよみがえらせることができるのか。ぶっちゃけ、ここまで落ち込んたものを、「オシャレ」や「価格」の訴求だけで持ち直すのは無理ではないだろうか。

 ならば残された道は、スーツ自体の役割や価値を根本的に見直していくしかない。そう考えていくと突き当たるのが、「スーツの制服化」だ。

 ご存じのように、工場などで働く従業員には作業服が支給・貸与されている。複数枚ほしい場合は、自腹で買うことができるが、必要最低限のものは支給されることが多い。飲食店や小売店で働く店員の制服も同様だ。

 これらと同じような形で、オフィスワーカーのスーツも「制服」という位置付けにして、会社が従業員に対する福利厚生としてすべて支給するのだ。もちろん、会社が従業員にスーツを支給すると法的に「現物支給」という扱いになって、従業員も給与課税されてしまう。福利厚生とするには、スーツも他の制服と同じように福利厚生費として計上できるように法改正をしていくことが必要だ。

 これをクリアして、従業員のスーツが「経費」で落ちることになれば、企業がどんどんスーツを購入してくれるはずだ。少なくとも今のように、サラリーマン個人が少ない給料の中からやりくりして購入するよりも圧倒的に多くなることは間違いない。つまり、スーツを制服化することで、個人向けから企業向けに事業を転換させて、新たな需要を開拓できるというわけだ。

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