マンションで充電は難しいのに、「EV」は普及するのか“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2021年08月03日 11時08分 公開
[加谷珪一ITmedia]

自動車保有世帯の7割は戸建てに住んでおり、いつでも充電ができる

 EVの最大の欠点は航続距離と価格だったが、最新モデルでは、航続距離は既存のガソンリ車と同等かそれ以上となっており、価格も安いモデルが出始めている。しかもほとんどの消費者は週末にしかクルマに乗らず、国内に存在する自動車の9割近くが稼働していない。しかも、毎日クルマに乗る人でも、平均走行距離はそれほど長くはなく、目的地までの行程において給油が必要な人はごくわずかだ。

 EVの場合、自宅のコンセントから充電ができるのでガソリンスタンドに行く必要がなく、クルマを駐車場に置いておくだけでいつでも充電ができる。価格はガソリン車と同等か安く、航続距離も変わらず、排気ガスを出さない。しかもいつでも満充電の状態でクルマを出せる。

 かつては、雪道での立ち往生が懸念されたこともあったが、部分暖房を使えば場合によってはガソリン車よりも長時間籠城ができるし、排気ガスによる一酸化炭素中毒を心配する必要もない。クルマに対してあまり思い入れのない多くの一般利用者(長距離トラックなど特殊業務を除く)にとって、EVが最良の選択肢となる可能性はかなり高いだろう。

EUはガソリン車の新車販売を2035年までに禁止する方針を打ち出した(画像はイメージです。提供:ゲッティイメージズ)

 日本では充電設備が不足しているので、EVは普及しないという意見もある。確かに欧米や中国と比較すると、日本の充電ステーションの整備状況はあまりにも貧弱といってよい。だが、もともと日本政府は、巨額の費用を投じて全国に水素ステーションを建設する方針だったことを忘れてはいけない。

 そのコストと比較すれば、充電設備を津々浦々に設置することなどタダ同然である。政府が支援すればこの問題は一発で片付くはずだが、仮にそうした措置がなかった場合でも、致命的なボトルネックにはならないと筆者は考えている。その理由は自動車保有世帯の多くが戸建て住宅に住んでいるからだ。

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