国産車は取り決めによって時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。そこで今回は国産車に備わっているスピードリミッターの謎を解明したい。
国産車にスピードリミッターが装備されるようになったのは1980年頃から。それまでの国産車は排ガス規制が甘かったこともあって、ソレックスのサイドドラフトキャブなど、高性能なキャブレターを奢(おご)ったスポーツエンジンを搭載したクルマも少なくなかった。当時のクルマは軽く、サイズが小さいこともあって、最高速度で時速200キロ以上を謳(うた)うモデルがいくつも存在していたのだ。
その当時はクルマの保有台数が急速に増加しており、なおかつ交通事故死者が年間1万人超えが常態化していたことも影響していると思われる。高速道路が整備され出したこともあって、重大な交通事故の増加を懸念したこともあったのだろう。75年に運輸省から口頭で自動車メーカーに通達が出され、国産車には時速105キロで鳴り出す速度警告音と180キロ(軽自動車は140キロ)で作動するスピードリミッターが自主規制で備えられるようになった。
しかし80年代のスピードリミッターは、その速度を超えると燃料の噴射をカットするという、今考えればかなり強引な方法で行われていた。そのためリミッターが作動するといきなりエンジンブレーキが掛かって減速することになり、エンジンにとっても走行時の安定性にとっても良い制御とはいえないものだった。
2000年代に入る頃には、点火を間引きしてさらに燃料噴射も絞ることで180キロの速度を維持したまま、安定して走行を続けられるスピードリミッターに改良されている。
ちなみに欧米ではクルマの最高速度にリミッターを設けることは極めて少ない。ドイツの自動車メーカーが高級セダンに限り250キロを上限とする自主規制を設けたほか、最近になってボルボが180キロのスピードリミッターを設定(専用キーで解除可能)したくらいだろう。スーパーカーではブガッティ・ヴェイロンが375キロ、後継車のブガッティ・シロンが420キロでスピードリミッターが作動する(どちらも専用キーで解除可能)らしいが、クルマの耐久性と乗員の安全性を考えても、いささか中途半端なリミッターであるといえよう。
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