なぜIPO価格は安すぎるのか? スタートアップ経営者へのアドバイス(1/4 ページ)

» 2021年09月02日 18時00分 公開
[寺田修輔ITmedia]

 以前からIPOの価格設定には「ゆがみがある」と言われていました。公開価格が安すぎるため、IPOする企業にとっては資金調達の機会をロスしています。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。そして企業にとって理想的なIPOとは? 企業の成長を支援するミダスキャピタルの寺田修輔取締役による寄稿。

 8月、公正取引委員会が新規株式公開時に企業が適切に資金調達できているか調査を始めたことが話題を集めている。未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得してもらう「IPO(Initial Public Offering)」は、ベンチャー企業にとって一度きりの重要なイベントでもある。しかし、そこにはさまざまな問題点があると指摘されている。改めて、国内のIPOについて何が問題視されているのか、そして理想的なIPOとはどんなものなのか整理したい。

IPOの問題点

 ベンチャー企業のCEOやCFOにとってIPOは、多くの場合、最初で最後の経験となる。このため経営者が、会社の株価が適正かどうかは分からないまま上場していくことも多くあるのが実情だ。そんな中、特に日本では事前に決定される公開価格と、最初に売買が成立した際の初値の差が、他の先進国各国よりも大きく乖離(かいり)しているという特徴がある。

 問題点の1つ目は、IPOにおいて企業側が適正価格かどうか分からないまま、値段が決められてしまうことだ。企業にとっては、たった一度しかない上場にもかかわらず、経営陣と証券会社、外部のアドバイザリーや投資家との間には、情報の非対称性があるのだ。

 2つ目は、上場時の値付けの金額によって、その後の資本市場での存在感が変わってくるにもかかわらず、経営陣がそれを十分に認識できていないことだ。IPOは不可逆性があり、一度行えばもう戻ることはできない。その後、上場してIRを改善すれば時価総額は上げていけると考えている経営陣も多いが、IPOでつけられた価格は変えることができない。経営戦略、投資戦略と整合した形で、財務戦略の要となるIPOの進め方を考えていく必要がある。

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