そこで気になるのは、なぜ『ゴルゴ13』というフィクションの中で描かれた問題が現実世界で「予言」のような再現されるのかということだろう。
筆者はやはり、さいとうたかを氏とスタッフの皆さんの綿密な取材力と想像力の賜物だと思っている。事実を基にしたフィクションは、時に精度の高い未来予測になるのだ。
実はそれは筆者も身をもって感じている。これまでのべ300件以上、企業などでメディアトレーニングの講師をしてきた。これは架空のシナリオに基づいて、模擬記者会見や模擬インタビューを体験してもらうものなのだが、そこで重要になってくるのがシナリオだ。あまり現実とかけ離れたシナリオでは、「会見ごっこ」になってしまう。「いつ起きてもおかしくないシナリオ」でなくては、受講者の危機意識も高まらないし、トレーニング効果も乏しい。
だから、実際に問題を抱えている事業、人事、過去の労務問題や品質問題、現実にSNSで少し叩かれているようなことをベースにしてシナリオを作るのだ。
そういうことを10年以上繰り返しているうちに、メディアトレーニング後、この架空のシナリオと同じような問題が発生するケースがわりと多いことに気付いた。事実を調べて「いつ起きてもおかしくない」と予想したことは、そのリスクが軽減されない限り、かなりの確率で「実際に起きる」のだ。
綿密なさまざまな事実をベースに組み立てられたフィクションである『ゴルゴ13』にも同様のことが言えるはずだ。しかも、『ゴルゴ13』の場合、一流の取材スタッフ、脚本スタッフがそろっている。精度の高い未来予測になって当然なのだ。
これこそが、筆者が『ゴルゴ13』をビジネスパーソンが読むべきだとおすすめする理由だ。
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