これは何も筆者だけが言っているわけではない。『産経新聞』も、この経済政策に関しては繰り返し難癖をつけている。
『分配を促すため、岸田氏は所信表明で「賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化する」と述べた。ただ、東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「減税だけで賃金を上げろといっても無理がある」と効果を疑問視する。既に中小企業を対象に、賃上げ分の15〜25%を法人税から減額する「所得拡大促進税制」があるが、企業の賃上げにはあまり結びついていないとされるからだ』(産経新聞 10月8日)
『6割超の企業は赤字で法人税を支払っておらず、税制支援の恩恵は受けない。こうした企業は大企業より中小企業に多く、「大企業優遇」だと批判があるのも事実だ』(産経新聞 10月12日)
では、そこで気になるのは、なぜ自民党は誰が見ても「効果が薄い」と言わざるを得ない、ぼんやりとした政策をこの大事な大一番で掲げているのか、ということではないか。
いろいろな考察があるだろうが、筆者は「菅路線の否定」というメッセージを広く示す意味合いが強いと感じている。要するに、これで本気で賃上げをしようということではなく、「ガースーは干したので安心してください」という選挙パフォーマンスだ。
「答え方に誠意がない」「伝える力ゼロ」などとボロカスに叩かれて去っていった菅氏だが、実はこれまでの自民党では実現できなかった政策をいくつも前に進めた、という点ではもっと高く評価をされるべきだ。
その一つが、「中小企業政策の大転換」である。
本連載で繰り返し説明してきたが、日本ではかれこれ50年以上、中小企業に対して「保護政策」がとられてきた。中小企業が倒産しないように、とにかく補助金なのでできる限り支えていくという政策である。
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