――3人の女の子が、200人のキャパシティーの目黒鹿鳴館から、そこまで成長した。
BABYMETALが歩んできた道のりをあらためて振り返ってみると、そこで蓄積されてきた底力は並大抵じゃないなと。どんな環境でもやっていけるなと感じました。
ワタクシがどうこういうより、メンバーはプロなんですよね。すごいプロフェッショナルです。ベテランのアーティストでもなかなか難しい人がいたりしますが(笑)、本人たちは非常にしっかりとしたプロ意識を持っています。
――KOBAMETALさんはBABYMETALが成長していく姿を間近で見ていたんですね。
どうなんでしょうか? メンバーの成長と同時に、ワタクシもスタッフもチーム全体で一緒に成長してきた感覚があります。親戚のおじさんが1年に1回孫に会って、「すごい背が伸びたね!」というような感覚ではないんですよ。
国内、海外問わず、シンプルに、ピュアに、好きなこと、「これだ!」と思ったことを続けられる環境が増えてきていると思うんですよね。
昔であれば、テレビや雑誌など一部のメディアでしか知ることができなかったものが、特にインターネットが普及して、容易に知ることができるようになり、新しいものに出合うチャンスが増えたと思います。
LOUDNESSさん(ラウドネス:世界的に活躍する日本のヘヴィメタルバンド)は何十年も前に海外ツアーをやって、Motley Crue(モトリー・クルー:米国西海岸を中心としたLAメタルを代表するバンド)さんのオープニングアクトを務めたりしていました。その頃は情報が入ってきにくいですから、それは相当に大変だったのでは? と思うんですよね。X JAPANさんもそうでしょうか。
いくつもの山を登ってきて、次はもっと高い山を登ろうとか、次の山の先はどうなっているんだろう? とか、そんなワクワク感を楽しんできた感じですし、これからもそういう感覚は持ち続けていたいと思っています。
――コロナ禍以降、BABYMETAL含め、音楽業界は「これだけ大変でした」という話を想定していましたが、ポジティブな考え方がそれを打破するヒントになりますね。
そうですね。確かに大変なことではありましたが、こういう状況にあっても「変えてはいけないもの」「変えなければならないもの」があると思っています。
それが、メタルのハートというか、魂みたいなもので、核になる部分は変えちゃいけないんです。しかし時代の移り変わりや外部環境の変化とともに、変えていかなきゃいけない部分もあるのかなと思っています。柔軟にというか、硬い心と、柔らかい頭で。
――『鋼鉄っぽいのが好き ‐人生9割メタルで解決‐』では、日本ハムの監督に就任した新庄剛志さんも取り上げていますね。
新庄ビッグボスにはメタルを感じますね。一野球選手にとどまらず、常に人を楽しませることを考えてらっしゃいますよね。野手でありながら投手にも挑戦、無謀と言われたメジャー・リーグへの挑戦、引退後はバリへ移住。まさに新庄ビッグボスご自身がおやりになりたいことをやってこられた。
それが今や誰もが想像しなかった日ハムの監督です。報道で知られた方も多いと思うのですが、芯には野球に対する硬い心がある。そして、柔らかい頭でエンタメを考えながら野球界を変えようとしています。なんと、新庄ビッグボス就任の報道後、ファンクラブ会員は8倍になったそうです。
――KOBAMETALにとってプロデュースとは?
ワタクシ自身はシェフみたいな存在なのかなと思っています。どういう味付けで、どれくらいの塩加減でとか、塩梅(あんばい)を調整する係です。「全てはバランス」と考えています。
多分ワタクシは、皆さんが一般的に思い浮かぶプロデューサーのタイプではないかもしれません。どちらかといえば監督兼プレイヤーみたいなイメージです。さらに付け加えると、常に当事者でありながら、ファンの1人でもあるような感じですかね。
――KOBAMETALさんの硬い心はビジネスにおける真摯さに思えます。
例えばワタクシのメンター的な存在である聖飢魔IIさん。今までに無かったものを生み出し、新しいものに対する批判を受けながらも、あのお姿で何十年も現役で活動されているのは、やっぱり軸がブレないというか、真面目じゃないとできないですよね。
どこかで一瞬、気持ちが揺らぐ場面もあったのでは? と思うんですけど、地道な積み上げと共にずっと続けられるのは、基本、根が真面目じゃないとできないと思うんです。メタルって破天荒に見えて、実はピュアで、クソ真面目なんですよね。
以上がKOBAMETALさんへのインタビュー内容だ。取材を通じて思い起こしたのは、経営学者のピーター・ファーディナンド・ドラッカー氏だ。
氏の著書『マネジメント』では「真摯さ(integrity)」の必要性が説かれている。一見、水と油と思えるメタル、ダンスを融合する柔らかい頭(発想)の一方、時代は変われど「真面目でひたむき、事を一心に行う」真摯さが、BABYMETAL成功の背景にあることは間違いない。
柳澤 昭浩(やなぎさわ あきひろ)
18年間の外資系製薬会社勤務後、2007年1月より10期10年間に渡りNPO法人キャンサーネットジャパン理事(事務局長は8期)を務める。科学的根拠に基づくがん医療、がん疾患啓発に取り組む。2015年4月からは、メディカル・モバイル・コミュニケーションズ合同会社の代表社員として、がん情報サイト「オンコロ」コンテンツ・マネージャーなど多くの企業、学会などのアドバイザーなど、がん医療に関わる様々なステークホルダーと連携プログラムを進める。「エンタメ×がん医療啓発」を目的とする樋口宗孝がん研究基金、Remember Girl’s Power !! などの代表。
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