IT先進自治体でも大苦戦? 非効率だったワクチン配送を、つくば市が変えられたワケ医療機関も使いやすさに納得

2021年に本格化した新型コロナワクチンの接種。この対応に追われたのが、各地方自治体。IT活用に積極的なつくば市も、ワクチン配送に苦労した自治体の一つだ。しかし、12月から始まった3回目接種では、あるツールを活用し、大幅な効率化を実現できているという。そのカギとは。

» 2022年01月31日 10時00分 公開
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 未曾有のコロナ禍に襲われる中、ようやく2021年春にワクチン接種が本格化し、各自治体は接種や配送体制の構築に追われた。接種や配送に関して、政府はワクチンの分配システムである「V−SYS(ワクチン接種円滑化システム)」やワクチン接種の記録システムである「VRS(ワクチン接種記録システム)」を用意しているが、現場の細かなニーズに対応することは難しく、結局は各自治体が別のシステムで管理する必要が生じている。

 多くの自治体がこれまでにない対応を迫られ混乱する中、茨城県つくば市では3回目接種に際し、ワクチンの配送管理にネオジャパンが提供している「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」と「AppSuite(アップスイート)」を採用。関係者がリアルタイムに正確な情報を確認できるシステム(「つくば市新型コロナワクチン配送システム」と「ワクチン数量管理票」)を構築した。

 そこで今回は両システムを導入した経緯と効果について、つくば市の板倉邦明氏(保健部健康増進課 新型コロナウイルスワクチン接種対策室 室長)とネオジャパンの柴奈保人氏(ソリューション営業部 部長)、また両者を取りつないだ地元企業である沼尻産業の河合直之氏(システム部 課長)に話を聞いた。

ネオジャパンプレスリリースより

メールや電話、FAXでのやりとりでは限界だった

 つくば市はスーパーサイエンスシティ構想を掲げ、全職員がデータ利活用の人事研修を受けるなど、DXを積極的に進めている自治体として有名だ。もちろん、コロナ禍においてもITを活用しており、ワクチンの予約システムを独自に構築。LINEやWebサイトから予約できるようにし、予診票もAI-OCRでデータ化している。

 一方で、煩雑な事務処理に課題を抱えていたという。21年2月に新型コロナウイルスワクチン接種対策室を立ち上げてからすぐに1・2回目接種が本格化したため、医療機関とのやりとりに関してはメール、電話、FAXなどで急場しのぎ的に対応していた。さまざまなチャンネルが分かれてしまい、情報共有が非効率になってしまっていたのだ。

 また、ワクチンの数量管理や配送手配などは国が用意したV−SYSを利用する予定だったのだが、稼働が遅れた上、実際に使ってみると細かい配送管理ができないことも判明した。そこで、Excelで管理することにしたという。

 しかし、やりとりする医療機関は100以上。電話やFAXでワクチンの希望配送数を聞いて、その都度Excelに手入力していては非常に手間がかかる。「今どきFAX?」と感じる人もいるかもしれないが、意外と多くの医療機関ではFAXをメインに使っているところもあるのだとか。ただ、このような管理方法ではなかなか効率的なやりとりができずにいた。つくば市側の人手も限られており、基本的には2〜3カ月に1回、ワクチンの希望数量を聞くとともに、変更があれば適宜受け付けるのみにとどまっていた。

 医療機関側も最初に希望数を提出してから時間がたつと、もともといくつ希望していたのかが分からなくなったり、勘違いしたりといった事態が頻発した。そこですれ違いが発生し、配送を委託している沼尻産業が届けると、「ワクチンの数が違う」といわれ、再配送が発生することもしばしばあったという。配送の工数がそれだけ増大してしまい、沼尻産業の手が回らないときは、市の職員が持っていくこともあったというから驚きだ。

つくば市役所の板倉邦明氏

 「数量変更を受け付ける期限を定めていても、医療機関ではワクチンの希望数に急な変更がよく起きます。ただ、電話やFAXで変更を受け付ける方式ですと、いつ数量変更の連絡が来るのか分かりません。そのため、折衝を担当する者が常に待機しているしかないという問題がありました。中には、休暇中にも数量変更の対応をするしかないような事態も起きていましたし、5〜8月はずっと忙しかったですね」(板倉氏)

 もちろん、電話やFAXが業務のボトルネックになっているのは分かっていた。そこで、2回目のワクチン接種が一段落した9月、どんなシステムがあれば業務効率が上がるのか、ITシステムの導入コンサルティングなども行っている沼尻産業につくば市が相談したところ、紹介されたのがネオジャパンのdesknet's NEOとAppSuiteだった。

「誤配送が間違いなく減る」 わずか2カ月ほどで操作性の高いシステムが完成

 沼尻産業は、以前から自社システムとしてdesknet's NEOとAppSuiteを導入していた。そのため、実際の使い勝手を熟知しており、つくば市が求めるシステムを作れることも分かっていたという。普段から使っているので、導入後もある程度フォローできる。さらに、ノーコードプラットフォームであることから、要望があれば簡単に機能追加などもできるという理由から、提案したという。

 そもそもdesknet's NEOはスケジュール管理やワークフローなどの機能を豊富に備えるグループウェアで、AppSuiteはdesknet's NEO上で動作するアプリ開発プラットフォームとなる。簡単に自分が欲しい機能を備えたアプリを自由なレイアウトで作成できるのが特徴で、プログラムを書かなくてもアプリを構築できるため、開発時間が短くて済むのもメリットだ。

 「9月後半に沼尻産業へ相談したのですが、そのときすでに3回目のワクチン接種が12月に差し迫っていました。約2カ月という期間で迅速にシステムを構築したいと考えており、また医療機関はITに弱いところもあるので、誰でも簡単に使える入力システムを構築してもらいたい、というのが希望でした」(板倉氏)

 実際にシステムを作り始めたのは10月に入ってからだが、11月に入るころには動作確認を行えていた。その後、アクセス権限を設定して、医療機関側には必要な情報だけ入力できるようにしたり、医療機関の希望数と配送予定数、沼尻産業の配送実績の3つを1画面にまとめて表示したりといったカスタマイズを加え、完成。11月下旬には各医療機関に渡して触ってもらうことができた。

 システムの利用に当たっては、つくば市と沼尻産業だけでなく、各医療機関にもアカウントを発行し、関係者がいつでもアクセスできるようにしている。動作したアプリに触った板倉氏は「これで誤配送が間違いなく減る」と感じたそう。当初の要望通り、本当に簡単に入力できるように作られていたのが、ポイントだったという。

 ちなみに、今回のシステム開発は無料で行われた。その意図について、柴氏は次のように話す。

 「ワクチン配送の効率化を迅速に進め、安心してお役立ていただくために、アプリの開発を無償で提供しました。開発費やコンサルティングの費用はなく、あくまで1アカウントにつき月額720円(税込み)というクラウドサービスの利用料のみをいただいています」

導入で連絡待ち作業から解放 他の業務もできるように

 今回開発したシステムは2つだ。新型コロナワクチン配送システムでは、医療機関が希望するワクチンの数がタイムリーに分かるようになっている。医療機関側と市と配送業者の3者がいつでもアクセスでき、最新の情報を入力・閲覧できる。

つくば市新型コロナワクチン配送システムのUI。非常にシンプルな構成となっている

 もう一つのアプリであるワクチン数量管理票では、これまで沼尻産業がカウントしていたワクチンの在庫量をアプリ上で管理できるようにした。医療機関がワクチンの希望配送数を入力したり変更したりすると、リアルタイムに反映され、つくば市側は国から配布されるワクチンの在庫数を見て、割当数を入力。沼尻産業はその数を見て配送するという仕組みだ。

ワクチン数量管理票のUI。こちらも無駄な機能やビジュアルを省いた、使いやすさを重視した構成

 「政府が用意したV−SYSにはいろいろな機能が付いていて、医療機関側から使い方が分からないという声も挙がっていました。そのため、今回のシステムでは、いかに医療機関の方が簡単に使えるかが重要なところでした。12月1日には稼働でき、入力の仕方などに関する問い合わせは若干ありますが、非常にシンプルなシステムなので、説明も短く済んで助かっています」(板倉氏)

 これまで電話やFAXでやりとりしていたときは、誤配送や急な配送などが発生していたが、システム導入後はそのようなトラブルが起きなくなった。また、従来は連絡待ちなどで非常に大きな負担だった業務が、今では1週間に数時間程度、システムを触るだけで十分に対応できるようになった。以前は別の担当者が文字通り“つきっきり”で作業していたところ、現在は板倉氏が別業務と兼任できるくらいの作業量に削減できたという。

自治体のIT導入に求められるセキュリティ対策も万全

 未知の領域であるワクチン接種に対し、ネオジャパンのソリューションを活用することで効率化を実現したつくば市。今後はどのような展望を描いているのだろうか。板倉氏に聞いたところ、ワクチン以外の業務への横展開も想定しているという。

 「市の業務は、当然ですがワクチン接種だけではありません。私は高齢者福祉に携わることも多く、もともとは医療介護の対応や地域住民と社会福祉協議会と連携した地域作りの業務を担当していました。今後はこうした分野でもdesknet's NEOを活用し、連携を深めていきたいと思っています」(板倉氏)

沼尻産業の河合直之氏

 実際につくば市と沼尻産業では、今回導入したシステムだけでなく、desknet's NEOが持つ機能の一つである、電子会議室機能なども活用し始めている。沼尻産業の河合氏が「(AppSuiteにより)配送数がリアルタイムで分かるところも便利ですが、そこと併せて、今までメールでやりとりしていた他の情報も、チャットのようにやりとりできるのが便利ですね」と話す通り、円滑なコミュニケーションによって、業務の効率化がより一層進んでいるという。

 一般的に自治体がITシステムを選ぶ基準は厳しく、特にセキュリティ面では盤石の体制が求められる。この点について、ネオジャパンの柴氏は次のように力強く話す。

 「AppSuiteで作成したアプリは、セキュアなデータセンターで管理されたサーバで運用でき、導入実績数の多いdesknet's NEOの認証下で動作します。また、ログインパスワードに関して、定期的かつ強制的に、一定のルールを持った文字列を条件として変更させる運用も可能です」

 セキュリティ対策が万全なだけでなく、豊富な機能を兼ね備えるdesknet's NEOと、機能追加や改修も手軽に行えるノーコードツールAppSuite。さまざまな形での住民対応が多く、いまだ紙などがメインで非効率的な業務も多い自治体を中心とした公的機関において、ぜひ導入すべきツールだといえるだろう。

すぐ使える! ワクチン配送システムのテンプレートを無償提供中

 ネオジャパンでは、各自治体に対して、今回つくば市が活用したワクチン配送システムのテンプレートを提供中です。

 必要なコストは、クラウドサービスの利用料金のみ(1アカウント月額720円)。ワクチン在庫数および接種会場となる各医療機関へのワクチン配布の管理を、低コストで大きく効率化できます。

 もちろん、ネオジャパンのdesknet's NEOとAppSuiteはワクチン業務以外にも活用可能。直感的な操作が強みで、コミュニケーションの活性化やさまざまな業務のデジタル化にも向いており、こうした課題にお困りの自治体があれば、ぜひネオジャパンへお問い合わせください。


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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2022年2月24日