Q 賃金制度づくりの本を読んだりセミナーを聞いたりすると、定期昇給やベースアップなど賃金を上げる方法だけを解説していて、賃金を下げる話は出てきません。わが社には病気を患ったのを境に成果が下がった社員がおります。このような場合、賃金を下げる制度というものはありませんでしょうか。
A 賃金を下げることは困難です。人間には「損失回避」という心理があるので留意が必要です。
残念ながら、パフォーマンスが下がったとはいえ、同じ仕事をさせながら賃金を下げることは困難です。
現状で貴社の給与規定に賃金を下げる条項がないとしたら、新たに作ることになります。例えば、評価ランクが最低である場合、定期昇給でマイナス昇給をするとか、賞与が不支給になるとかの条項を新たに設けます。これは給与規定の不利益変更です。
不利益変更が裁判所から有効であると判断されるためには、その変更に合理性が必要です。人事評価を経るとはいえ、会社側が一方的に労働者の賃金を減額できるような制度変更に、合理性があると判断されるかどうかは分かりません。
一度決めた賃金を下げることは法的に困難なだけでなく、経済効率の面でも問題があります。人間には「損失回避」といって、得をしたことよりも損をしたことの方を重視する心理があります。どんな心理でしょうか。
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