ハラスメントというと、従来、セクハラ・パワハラが主流でしたが、最近では、トラブルの内容が多様化してきています。そこで、各保険会社は補償の範囲を拡大しています。
例えば、多くの保険会社が、マタニティハラスメント(妊娠や出産、育児に関するハラスメント)やケアハラスメント(介護中の従業員に対するハラスメント)を補償範囲に含めるようになりました。他にも、モラルハラスメント(言葉や態度で嫌がらせをするハラスメント)、カスタマーハラスメント(顧客から理不尽な要求をされるハラスメント)に備える保険もあります。
さらに、ハラスメントの被害者も多様化しています。例えば、自社に勤める従業員が、取引先の従業員に対してセクハラをしたり、子会社の従業員に対してパワハラをしたりすることも十分起こり得ます。
そのようなケースでは、取引先の従業員や子会社の従業員から企業が訴えられることになります。そうした訴訟リスクに備えるため、自社の従業員からだけでなく、取引先の従業員や子会社の従業員からの賠償請求についても補償範囲に加える商品が出てきています。
また、中にはトラブル発生後の記者会見のサポートやおわび文書の作成方法の指南を受けられたり、ハラスメントセミナーなどを受けられたりする商品もあります。
いろいろなタイプのハラスメント保険があるので、加入を検討する際は、自社の置かれた状況に合わせて、必要な補償を提供してくれる商品を選ぶことが大切でしょう。
5月19日(木)公開の後編では、パワハラ防止法の適用に伴って中小企業が対応しなければいけないことや、取り組んだ方が良いことについて、解説します。
佐藤みのり 弁護士
慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。ハラスメント問題、コンプライアンス問題、子どもの人権問題などに積極的に取り組み、弁護士として活動する傍ら、大学や大学院で教鞭をとり(慶應義塾大学大学院法務研究科助教、デジタルハリウッド大学非常勤講師)、ニュース番組の取材協力や法律コラム・本の執筆など、幅広く活動。ハラスメントや内部通報制度など、企業向け講演会、研修会の講師も務める。
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