ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は、2021年11月19日に史上最高値となる16057.44ポイントをつけた後、調整に転じ、22年5月24日には11264.45ポイントまで下落しました(いずれも終値ベース)。この期間の下落率は29.9%に達しましたが、米長期金利の上昇などを背景にハイテク株が大幅安となり、これが同指数の下げを主導する格好となりました。
こうしたなか、ナスダックは先週、8週ぶりに上昇しました。5月25日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(22年5月3日、4日開催分)にて、金融緩和を迅速に取り除けば、委員会は年後半には政策効果を評価できるいい位置に立てる旨の表記が確認され、先行きの利上げ一服期待が、株式市場に広がったとみられます。そこで今回は、昨年来のナスダックの調整局面が、終了に向かうか否かを考えてみます。
5月に入ってからのナスダックのローソク足チャートをみると、11000ポイント付近で反発する動きが、5月12日、20日、24日の3回、確認されており、この水準が目先の下値目途として意識されている模様です(図表1)。そのため、ナスダックがこの先、11000ポイント割れとなれば、調整局面は継続と判断されますが、3回サポートされていることを踏まえると、底入れの兆しとも考えられます。
次に、もう少し長い期間の値動きをみてみます。20年3月安値から21年11月高値までの上げ幅について、テクニカル分析の1つであるフィボナッチ・リトレースメントで目安とされる50.0%押した水準は、11421.83ポイントです(図表2)。ここでも、11000ポイント台のサポートが示唆されています。仮に、50.0%水準を下抜けた場合、次は61.8%水準の10291.29ポイントが視野に入ります。
なお、ナスダックは5月27日に、25日移動平均線を上抜けて取引を終えています(図表1)。この先、75日移動平均線(5月27日時点で13095.95ポイント)を回復すれば、底離れがより明確になり、200日移動平均線(同14332.15ポイント)を回復すれば、調整局面はほぼ終了と考えられます。相場の大底の判断は、非常に難しいのですが、その兆しは見え始めているようにも思われます。
米国では6月に入ると、3日に5月分の雇用統計、10日に5月分の消費者物価指数が発表され、14日、15日にFOMCが開催されます。例えば、雇用統計で労働参加率の上昇と賃金の伸び鈍化が、消費者物価指数で前年比の伸び鈍化が、それぞれ確認され、FOMCでタカ派の度合いがやや後退すれば、株価には強い追い風となります。ナスダックを展望する上で、これらの動向はとても重要であり、当面の注目材料です。
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
© 三井住友DSアセットマネジメント
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