米国株ブームで増加した投資系インフルエンサーの推奨により、「レバナス」と呼ばれる投資信託がここ半年で半値近くまで大暴落している。
「レバナス」とは「レバレッジ」と「ナスダック」を掛け合わせた投資信託だ。「レバナス」は日々の基準価額の値動きがNASDAQ-100指数(米ドルベース)の値動きに対して、概ね2倍程度となることを目指したファンドである。
一部では「ツミレバ投資」などと銘打って、レバレッジ商品の長期積立を推奨する業者も現れていた。しかし、レバナスをはじめとしたレバレッジ型の金融商品については、金融庁が2021年6月の時点で注意喚起を行っており、「主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品」と分類していた。
それだけでなく、長期投資を前提とした資産形成制度であるつみたてNISAからもレバレッジ型の投資信託は除外されている。件の「レバナス」も当然、つみたてNISAでは投資できず、24年から開始される新NISA制度からも対象から除外される見通しだ。
レバレッジ型の金融商品に発生する「減価リスク」や「出口戦略」におけるリスクについては、21年末に執筆した「急増する“レバナス信仰”の裏に隠れた投資信託『負の側面』」という記事にて既に解説を行っている。
今回は、前回に紙面の都合で紹介しきれなかった投資信託の「繰上償還」リスクについて確認していきたい。
繰上償還リスクとは、投資信託系統の金融商品に特有のリスクであり、「レバナス」をはじめとしたレバレッジ型の投資信託にとって“天敵”ともいえる存在だ。
繰上償還とは、市場環境の悪化など、当初の想定と比べて運用の継続が難しくなった場合に適用されるもので、その時点で運用が終了する条項だ。
通常の投資信託であれば、価格が堅調でも投資家からの人気が集まらなかった投資信託が繰上償還されることもあり、その場合は繰上償還時点で利益が出るようなパターンもある。
しかし、レバレッジ型投信が繰上償還される場合の多くは、株価の下落局面で発生する。仮に人気のある投信であっても、レバレッジによって株価下落の影響が増幅されると、その投信の純資産総額が大幅に毀損(きそん)し、繰上償還に追い込まれる。この場合の多くは繰り上げ償還時点で含み損となり、強制的な損切りを余儀なくされるのだ。
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