持続可能な未来のための活動とは これからの社会を創るビジネスを考える

» 2023年02月27日 10時00分 公開
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 「SDGs(持続可能な開発目標)」が2015年に国連サミットで採択されて以降、環境問題やジェンダー問題などへの注目が高まっている。近年では、家電製品や電子機器が中古利用されず処分される「電子ごみ」問題が深刻化しており、単なるビジネス成長だけではなく、持続可能な社会を見据えた上での価値提供が求められている。

 電子ごみをはじめとするさまざまな環境問題とどのように向き合い、どのようにしてサステナブルとビジネスを組み合わせて社会貢献していけばよいのか。そのヒントとなるオンラインイベント「E-wastream Japan 2022」が11月に開催された。

 本オンラインイベントでは「持続可能な未来を創る -これからのビジネスのカタチ-」をテーマに、MAGO CREATIONの代表取締役で美術家の長坂真護氏、ハチドリ電力代表の小野悠希氏、ゲットイット代表取締役社長の廣田優輝氏による鼎談が行われた。今回はそのイベントレポートをお届けする。

電子ごみ問題と“サステナブル・キャピタリズム”への挑戦

 長坂真護氏は2017年、「世界最大級の電子機器の墓場」といわれるガーナのスラム街、アグボグブロシーを訪れ、先進国が捨てた電子機器を燃やすことで生計を立てる人々と出会う。以降、廃棄物でアート作品を制作し、その売上から生まれた資金を使って現地を支援する活動を続けている。

MAGO CREATIONの代表取締役美術家の長坂真護氏

 同氏は19年、アグボグブロシーにスラム街初の文化施設を設立。この活動を基にしたドキュメンタリー映画「Still A Black Star」を制作し、21年にアメリカのNEWPORT BEACH FILM FESTIVALで「観客賞部門 最優秀環境映画賞」を受賞した。

 アグボグブロシーでは、現地の人々が世界中から集められた電子ごみを焼却している。周囲は有害な煙で覆われ、「地球上において最も毒性の強い場所を作り出している」と長坂氏は紹介する。「同時に自分もそういった廃棄物を生み出している1人だと気付きました」とドキュメンタリーで長坂氏は語っている。

ドキュメンタリー映画「Still A Black Star」を紹介する長坂氏

 活動を開始したばかりの2018年、現地の電子ごみをそのまま画材として発表したアート作品は、制作費はわずか1万円だったが1500万円で購入された。この利益率を実現した理由は、文化・経済・環境の3つのコンセプトをかけ合わせたからだ。アート作品を通じてメッセージを広め、共感した人が高額で購入することで、その売上をガスマスク購入や学校設立などに活用している。

 長坂氏はこの3つのコンセプトが好循環する新しい資本主義の仕組みを「サステナブル・キャピタリズム」として提唱する。これは「競争し資本を使いながら持続可能な社会は作れないか」という提案だ。

 日本ではサステナブルな活動として「なるべく電気を使わない」「無駄な消費をしない」ことなどがよく挙げられている。しかし、長坂氏は「この便利な生活を変えずに、環境負荷や人権負荷のない社会を目指すのが私たちのインテリジェンスではないか」と考えている。自身もリサイクル事業、フェアトレードコーヒー事業、現地バイクの全電動化を目指すEV事業などに取り組み、ビジネスを成長させると同時に、スラム街がサステナブルな街へ変化できるような活動に注力している。

 「SDGsには非常に多くの指標がありますが、『文化』『経済』『環境』の3つだけ覚えてください。1つのプロダクトやサービスがこの3つを全て動かす仕組みになって初めて、持続可能な社会と呼べるのではないでしょうか。これからは0から1ではなく、1を0にデザインできる社会人やクリエイターが、この社会をリードしていくことは間違いありません。利益を追求しても決して愛は生まれませんが、愛を追求すれば利益を生む社会が到来しています。今こそ愛を尊重し、これからの明るい未来を一緒に作っていきたいと考えています」(長坂氏)

電気を使うほど環境問題の解決につながる仕組み

 小野悠希氏は大学2年生の夏休みに東南アジアを訪れたことがきっかけで、ソーシャルビジネス(社会課題の解決を目的としたビジネス形態)という世界を知る。その後、「地球温暖化のために絶滅する動植物をなくしたい」という思いから、社会起業家の集まるボーダレス・ジャパン内でハチドリ電力の事業を立ち上げた。

ハチドリ電力代表の小野悠希氏

 日本の発電のうち4分の3は火力発電で、自然エネルギーはわずか22%と、先進国の中でかなり低い割合となっている。また、各家庭で最もCO2を出しているのは電気で、全体の45%を占める。そこで、小野氏は地球温暖化への対策として自然エネルギーに切り替える人を増やすことが最も効果があると考え、ハチドリ電力を創業した。

 ハチドリ電力の特徴は3つある。1つは、届ける電気は全て自然エネルギーであること。2つ目は、電気代の1%が自然エネルギーの発電所を増やす取り組みに使われるため、利用者が電気を使うほどにその発電所が増える循環の仕組みを持っていること。3つ目が、電気代の1%を自分が応援したい社会活動の支援に使えるため、毎月電気を使うことで継続的かつ負担が少ない形で支援を続けられるようになっていることだ。

 小野氏がこのような事業を立ち上げた背景に、社会課題をビジネスで解決するという「ソーシャルビジネス」との出会いがある。社会課題のために起業する「社会起業家」の増加は、社会課題の解決に直結する。ボーダレス・ジャパンのグループ内には、ハチドリ電力を含む49の会社が立ち上がっており、ソーシャルビジネスの活性化につなげている。

 ハチドリ電力は長坂氏と提携しており、契約世帯の一部が長坂氏の活動を支援している。電気を使うほど環境負荷が減るだけでなく、長坂氏の活動も応援できるため、「これも立派なコミュニティーだ」と長坂氏。また、ハチドリ電力の講演に無料で登壇することで、コミュニティーに対してメッセージも発信できる。まさにサステナブル・キャピタリズムを体現するサステナブルな事業体であり、「ソーシャルビジネスの中でもすごくいい仕組み」と長坂氏は評価する。

 今回のウェビナーを主催したゲットイットも、サーバやネットワーク機器などのハードウェアが持続可能な形で提供される「サステナブルコンピューティング®」の実現をミッションとして掲げている。同社の廣田社長は「自分たちができる小さいことから始めることが私たちの環境へのアプローチ」と語る。

ゲットイット代表の廣田優輝氏

 「われわれが行った最初の寄付は、地雷撤去を担うようなNPO団体の事務局へ、ノートPC1台を寄付することでした。小さいことから始めることが、環境問題や社会課題への取り組みの第一歩となると考えています」(廣田氏)

社内を巻き込んでサステナブルな活動に取り組めるようにするには

 ビジネスが大きくなるほど社会に与える影響力は大きくなる。社会的インパクトを最大化させるために、事業拡大をどのように捉えるのか。三者にはそれぞれのスタンスがあった。

 「道徳的かつ超クレイジーな活動は、社会に大きなインパクトを与えます。だから私は、クラウドファンディングで総額4000万円を集めて、ハリウッド映画を作りました。会社が成長してソーシャルインパクトを起こすよりは、先にソーシャルインパクトの仕掛けを用意して、メディアや投資家、アート作品を購入する人を巻き込み、期待に応えていくイメージです」(長坂氏)

 「私たちは成し遂げたいことから逆算していくスタイルです。広告費をかけずとも、いいサービスを作れば利用者が必ず広めてくれます。いいサービスを設計して、価値提供できるよう時間をかけて作り込むことを考えてサービスを作りました」(小野氏)

 「長坂さんとは逆で、地道に進めていくタイプです。ただ、事業利益の中から社会貢献に支出するのではなく、はじめから経費として計画を立てて、徐々にできることと金額を増やしていけるよう取り組んでいます」(廣田氏)

 廣田氏が代表を務めるゲットイットでは、リユース事業の新たな顧客提供価値として、資源の有効利用だけでなく環境負荷低減にも着目。創業20周年を迎えた2021年からNPOの活動を支援する「未来費」を新設し、「E-waste問題」への取り組みを加速している。22年度は売上の0.5%を予算として計上。今後段階的に1%まで引き上げる方針だと話す。

 これからソーシャルビジネスに取り組む企業にとっては、ゲットイットのような経営者の強いコミットメントとともに、社員を巻き込んで活動に取り組む姿勢が求められる。サステナビリティの社内浸透を図り、社内のモチベーションも上がるような施策が必要だ。長坂氏は「文化・経済・環境の3つのコンセプトを解説し、ビジョン共有を図るとよいのでは」と提案する。

 「サステナビリティは本質的に人間が求める基本的な欲求を全て満たしています。今までの資本主義では、ビジネスが成長するほど環境に悪影響を及ぼしていたので、体の中にアレルギーが出て、Z世代を中心に出世欲や労働欲がなくなっていった。そういう人々にサステナブル・キャピタリズムの話をすると、やる気が出てくるそうです。お金を稼ぎ、地球をきれいにし、自分も幸せになるという三方良しのビジネスです。人間と動物が本質的に持つ“喜ばせる力”をブレンドし、ビジョン統制に使うことが大切です」(長坂氏)

 その一方で、「環境問題のような大きな問題は、自分一人が取り組んだところで何も変わらないのでは」という考えもいまだ根強い。「私も昔はそう考えていた」と小野氏は振り返る。

 「それでも、『私は私にできることをする』と考える人が増えれば、絶対に世界は変わっていきます。行動を起こす一番のきっかけは、身近な人が勧めてくれること。自然エネルギーを使う人がそのよさを発信し、それを見た5人が使い始めてさらにその5人が発信する。そうやってどんどん波及していく流れが生まれれば、自然とサステナビリティを取り入れる人が増えていくと思っています。今日のこの話が、みなさんの行動を1つでも2つでも変えるきっかけになればすごくうれしいです」(小野氏)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年3月21日