なぜ「かつや」に何度も通ってしまうのか 男性客を虜にする「100円割引券」戦略に迫る強みを分析(1/4 ページ)

» 2023年05月29日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

 独自のフライヤー技術によってとんかつの低価格化を実現し、年々店舗数を増やし続けてきた「かつや」。コロナ禍でも高いテークアウト比率によって業績を伸ばすことに成功したが、成長の秘訣は低価格だけではない。クーポン戦略もかつやの成長を牽引したようだ。

 他社もクーポンを提供しているなか、なぜかつやのクーポンが特に効果を発揮しているのだろうか。さまざまな調査結果を引用しながら、クーポン戦略で成功した秘訣を探ってみた。

「かつや」はなぜ強い?

天ぷらに失敗し、とんかつで成長

 かつやの運営会社であるアークランドサービスホールディングス(HD)の沿革を簡単に紹介する。1993年に設立された同社は、レストラン「サンマルク」や「ドトールコーヒー」にフランチャイズ(FC)として参入しながら、天ぷら系料理のオリジナルブランド店として「てんぷ亭」を展開し始めた。しかし、てんぷ亭はヒットせず後に閉店となる。

 一方、98年から展開し始めたとんかつ専門店のかつやは国内にとんかつ系チェーンが少なかったこともあってヒットし、次々に店舗数を増やしていく。

 2002年には直営・FC合わせて100号店目の店舗をオープンし、07年度末には126店舗体制、12年度末には国内208・海外1店舗体制となる。15年度末には国内321店舗体制となり、19年度末には国内400店舗を突破。その後はコロナ禍でも店舗数を増やし、22年度末には国内450・海外75店舗体制となった。ちなみに22年度末時点における国内店のFC比率は69%である。

 なおアークランドサービスHDはかつやのほか、タイ料理の「マンゴツリー」、唐揚げ定食専門店の「からやま」を展開しているが、22年度の全社売上高472億円の内、かつや事業(国内)の売上高は280億円だ。つまり、国内のかつや事業が主力である。

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