なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2023年07月19日 10時26分 公開
[窪田順生ITmedia]

構造的問題も関係

 レオパレス21の場合、人口減少で空き家問題も深刻な中で、新築アパートを大量に建て続けて売り上げをつくる、という人口増時代の戦略を継続してしまった。結果として、サブリース(家賃保証)というシステムが破たん。一方的に家賃を減額したレオパレスに対して、オーナーが集団訴訟を起こすなど対立が激化しているほか、コスト削減のためアパートの違法建築問題を引き起こした。大東建託も厳しいノルマがあると指摘され、たびたび以下のような不正疑惑が報じられている。

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 これらはもちろん各社の企業文化うんぬんということもある。が、この時代に生まれた組織特有の「人口増時代の拡大路線がやめられない」という問題もかなり関係していると考えている。

人口が増えて、経営はうまくいっていた(提供:ゲッティイメージズ)

 一体どういうことか。ビッグモーターを例に説明していこう。同社が創業したのは第二次ベビーブームが終わった76年、現在の兼重宏行社長が、出身地の岩国市南岩国町で「兼重オートセンター」を個人創業したことが始まりだ。

 この会社は団塊ジュニア世代が成長していくのと、歩みを合わせるように山口県内で店舗を拡大していく。高度経済成長は終わっていたが、74年に自動車輸出台数世界一となってから自動車は日本を代表する産業として、確固たる地位となっていた。団塊世代ファミリーがレジャーで使うということもあって、マイカーもよく売れていく。

戦後、自動車の台数はどんどん増えていったが……(提供:ゲッティイメージズ)

 その後、同社は団塊ジュニア自身が自動車を乗り回す時代(89〜92年)から鈑金塗装専門工場や、外国車専門販売店舗など事業を拡大。そして、団塊ジュニア世代が社会人として活躍をして、ファミリーをつくる人が増えていく時代(2001〜05年)になると他県にも積極的に出店して、全国展開を加速。現在のように北海道から沖縄まで263店舗、従業員6000人(2021年2月時点)の巨大企業に成長したというわけだ。

 ただ、快進撃はここまでだ。全国制覇を達成したのはいいが、日本は毎年、鳥取県の人口と同じ数の人が消えていく。消費者が減ることに加えて、カーシェアリングや高齢化でクルマを手放す人も増えていく。つまり、これまでのような拡大路線は通用しなくなる。

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