なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2023年07月19日 10時26分 公開
[窪田順生ITmedia]

昭和の成功体験を捨てられない

 このあたりは「全国制覇」を掲げて拡大路線を突き進んだ「いきなり!ステーキ」や高級食パンなどの失速を見れば明らかだろう。

 しかし、このようなシビアな現実を受けいれることができないのが、団塊ジュニア企業の特徴だ。拡大路線で店舗を増やして、広告をバンバン打てば、客もどんどん増えていく、という昭和の成功体験が強烈に刷り込まれているので、それを捨て去ることができない。

報酬を自主返上(出典:ビッグモーターのWebサイト)

 すると、どうなるのかというと、現場に過大なノルマを強いる。そして、その無茶振りを誤魔化すように、景気のいい話を触れ回るようになる。

 「マネジメント」で知られるピーター・F・ドラッカーによれば、マーケティングというのは何もしなくても自然にモノが売れていく状態だが、それが機能していないときは「プロパガンダ」の力に頼るようになるという。つまり、自画自賛的な「広告」を大量に投入する物量作戦になるのだ。

 有名俳優を起用したテレビCMが山ほど流れていることが象徴的だが、Webサイトを見ても以下のように、同社がプロパガンダに力を入れていたことはよく分かる。 

 『ついに沖縄にも初出店! 日本全国に出店拡大中! 6年連続買取台数日本一!』

 『中古車買取価格満足度No.1 中古車販売顧客満足度No.1』

広告を大量に投下(出典:ビッグモーターのWebサイト)

 太平洋戦争で戦局が悪くなればなるほど、日本軍は戦果を偽り、「世界一勇ましい日本軍の攻勢で、米国はもう降参寸前だ」と大騒ぎしていたことからも分かるように、日本型組織は苦境に立たされるほど、プロパガンダに力を入れる傾向がある。

 そして、現場には理不尽な目標を押し付ける。「お国のために玉砕して、敵を1人でも多く道連れにせよ」という命令は見方を変えれば、「現場に過大なノルマを強いている」ことと同じことだ。

 団塊ジュニア企業が拡大路線を突き進んで現場に不正を強いているのは、かつて日本軍が負け戦でも撤退できず、現場に「玉砕」を強いた問題の延長線上にある。つまり、日本型組織の典型的な「病」のひとつなのだ。

 例えるのなら、団塊ジュニア企業が「人口急増」という「上りエスカレーター」に乗って、ここまで順調に成長してきたのだ。

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