リテール大革命

物流「2024年問題」まであと7カ月――トラック積載率を上げる4つの方法仙石惠一の物流改革論(2/2 ページ)

» 2023年08月28日 17時19分 公開
[仙石惠一ITmedia]
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荷姿の「ロス」を見つけ、改善する

 2024年以降も安定的な輸送能力を確保するために、欠かせないのが「荷姿改善」だ。より少ないトラックで輸送するためには、荷台にロスを発生させない工夫が必要。そこで、今後以下の取り組みを実行していこう。

1. 問題把握:荷姿ロスの認識

 調達荷姿でも出荷荷姿でもよいので、受入場や出荷場でその荷姿を観察してみよう(図表1)。手順はというと、最初にその荷姿を真横から見る。パレットの上に箱がきちんと積まれているだろうか。箱が1つや2つ歯抜け状態になっていないだろうか。このような観点でロスを見つけてみよう。

図表1:荷姿を観察しロスを見つける

 次に真上から見てみよう。そうするといろいろなロスが見えてくる。目立つのは積まれた箱の真ん中に「穴」が開いているケースだ。これを通称ピンホールと呼ぶが、これがあるだけで約14%程度の積載率低下につながる。

 パレットは必要悪といえる。手積み手降ろしを避けるために必要だが、パレットの分だけ製品を積載できないのだから、荷台の上ではロスだ。箱の中の充填(じゅうてん)率も重要だ。

 以上のようにまず、荷姿にどのようなロスが発生しているか認識しよう。

2. 改善実行:トラックの荷台にマッチした容器モジュールの設計

 次に「トラックの荷台にマッチした容器モジュール」を設計しよう。海外では日本と比べものにならないほどの長距離を輸送しているため、この考え方は一般的だ。一方で日本ではほとんど考えられていない。

 だからこそここで認識していただき、今後の会社の物流改善活動の一つとして取り組んでいただきたい。では具体的にどうするのか。それは、最もよく使うトラックの荷台を「輪切り」にしていき、その結果できた縦横高さの箱を「輸送用荷姿のための容器」とすることだ。図表2に例を載せておくのでご覧いただきたい。

最もよく使う輸送機器に合わせた荷姿モジュールを検討する

「多角的輸送モード」の採用を

 最後に「多角的輸送モード」の採用について触れておく。輸送モードとは輸送手段のことを指す。主な輸送モードにはトラック、船舶、鉄道、航空機がある。この内トラックはとにかく便利だ。狭い国内であれば離島以外であればどこへでもドア・ツー・ドアで荷物を運べる。物流に詳しくなければ大抵、輸送をトラックに頼る。だから今のような問題が生まれたともいえるだろう。

 一方で日本は島国のため、海運が発達している。鉄道も不自由を感じることも少ない。そこで、トラック以外の輸送モードを使う手があるのだ。将来的な輸送能力不足対策と同時に、主に利用している輸送モードが使えなかった場合のバックアップ、つまり物流のリスクマネジメントとしても活用できる。

 航空機はリードタイム的に最高ではあるが高額なため、よほどコスト負担力がなければ使い勝手はよくないかもしれない。500キロメートル超となる長距離輸送がある場合は、すぐに船舶と鉄道の活用を検討しよう。

まとめ

 24年4月まであと7カ月程度となった。今、世の中で言われている輸送能力不足問題が起きる可能性は高い。さらに、24年以降も問題が拡大していくことが考えられる。

 この状況下で、大半の方が何をしたらよいのか分からないでいる。しかしこれまでの3回の記事を読まれた皆さまは、やるべきことを認識されたものと思う。あとはそれを「やるか、やらないか」だけ。ぜひ、実行することで将来的な危機を回避していただきたい。

著者プロフィール:仙石 惠一(せんごく・けいいち) 

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合同会社Kein物流改善研究所代表社員。物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。

1982年大手自動車会社入社。生産管理、物流管理、購買管理を担当。物流Ierの経験を生かし荷主企業や物流企業の改善支援、各種セミナー、執筆活動を実施。

著書『みるみる効果が上がる!製造業の輸送改善 物流コストを30%削減』(日刊工業新聞社)『業界別 物流管理とSCMの実践(共著)』(ミネルバ書房)

その他連載多数。

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