コロナ禍で土産売り上げ9割減 沖縄の菓子メーカー、おからに見いだした成長戦略とは?

» 2023年09月23日 06時00分 公開
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 ナンポー(那覇市、安里睦子社長)は、沖縄県産黒糖や島豆腐の製造過程で出るおからを活用した新商品「たすと おからビスケット」を開発した。おからの再活用や紙製のパッケージなど持続可能な開発目標(SDGs)の視点にこだわる。観光土産ではなく県民向け市場の開拓を進め、すでにスポーツジムや薬局など約40店舗での販路を確保。産業界の食品ロス削減や県民の健康増進、自社の新市場開拓という「三方良し」のビジネス展開に挑む。(政経部・川野百合子)

ナンポーが販売する4種類の「たすと おからビスケット」

 「たすと」は「体に足し算」をコンセプトに開発。健康や美容にいいタンパク質や食物繊維を手軽にプラスできる「健康と美容の足し算」や、チーズ、紅芋、シナモン、きなこの4種類の食材とおからの「食材と食材の足し算」などの意味が込められている。

 開発のきっかけは、おからを使ったスプーンを開発した琉大生によるベンチャー「Okaraokara」についての報道だった。食品ロス削減や島豆腐文化の継承に奮闘している若い人がいる一方、安里社長は「何もできず、菓子製造会社の経営者として情けないとの思いがあった」と振り返る。

 コロナ禍で観光客が減少し売り上げが9割減となる中、事業の維持を最優先にせざるを得ない事情があった。だが、コロナ禍で県民や企業に買い支えてもらった経験もあることから、豆腐店の事業継続の一助になればと、1年半ほどかけ商品開発に取り組んだ。

 おいしさとタンパク質や食物繊維の成分のバランス、グラム数をそろえるための成形など、初めて扱うおからという原材料に苦労もあったが「勉強をしないといけない分、従業員のスキルアップ、成長にもつながった」とみている。

 コロナ禍の経験から新しい市場や販路開拓を模索してきた経験も生かされた。「たすと」はスポーツクラブやヴァインドラッグなどのみなと薬品グループ、すこやか薬局など、健康や栄養補給に関心が高い層へアクセスできるよう販路を開拓。手軽に食べられるよう1袋250円に設定した。

 今後はラインアップを増やし、高齢者でも食べやすい新商品の開発、栄養素の拡充などにも着手する。

 安里社長は「おからを使った商品が増えて、沖縄本来の食文化が守られ、県民にも健康が広がってくれれば」と期待した。

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