スシロー「デジタル回転寿司」の衝撃 くら寿司との都心決戦を左右する「レーン戦略」回転寿司は「回らない」がスタンダードに?(3/3 ページ)

» 2023年10月14日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
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回転レーンをサイネージに再現 「デジロー」の衝撃

 対するスシローは、9月から3店舗で「デジロー」の試験導入を始めており、回転レーンのデジタル化を図っている。デジローは、テーブル席に設置した大きなデジタルサイネージを活用したサービスで、画面上に寿司のイラストが流れてくる。画面上のイラストをタッチすると注文でき、注文した商品が提供される仕組みだ。一定金額ごとにゲームもでき、ある程度のエンターテイメント性を兼ね備えている。

 スシローはデジローの試験導入の他に、既に展開している「Auto Waiter(オートウェイター)」も拡大させるようだ。オートウェイターは、タッチパネルで注文した商品が専用のレーンで運ばれてくるシステムで、通常とは異なるレーンが配置されている。デジローとオートウェイターの効果が確認されれば、今後スシローで従来の回転レーンが完全に廃止されるかもしれない。

「レーン」が都心部での決戦で勝敗を分ける要素に?

 回転レーンを流れる寿司には、宣伝とエンターテイメント性の効果がある。一方、高精彩な寿司を表示できるタッチパネルが普及したことで、回転レーンの宣伝効果は薄まったともいわれている。実際に入店してから、回転レーンを見ずにタッチパネルで選ぶ人も多いことだろう。「魚べい」などを展開する元気寿司では、業界に先駆けて12年から回転レーンを廃止。「回らない寿司」によって売り上げは落ち込むことなく、むしろ利益率の改善につながっている。

 直近の取り組みを見ていると、回転レーンに残るエンターテイメント性の部分でスシローとくら寿司の違いが現れたといえよう。握りの品質を重視するスシローは、レーンの在り方を変えてデジタル化でも良いという考えだ。一方のくら寿司は、子どもや若年層を対象とした施策が多く、エンターテイメント性を重視して従来の回転レーンを残した。

 なお、今後スシローとくら寿司は、いずれも強みとしてきたロードサイドに加え、都市部への出店を強化する考えだ。スシローが推し進めるデジタル回転寿司と、くら寿司が維持する従来型の回転寿司。どちらが都市部で受けるのだろうか。都市部での勝敗を分ける大きな要素には違いないだろう。

デジローでは2種類からデザインを選択できる
デジローの商品説明画面
ゲーム的な要素も
ゲーム的な機能で遊ぶ様子
ゲームの結果によっては、景品をゲットできる
クイズ的な要素も

著者プロフィール

山口伸

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_


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