対するスシローは、9月から3店舗で「デジロー」の試験導入を始めており、回転レーンのデジタル化を図っている。デジローは、テーブル席に設置した大きなデジタルサイネージを活用したサービスで、画面上に寿司のイラストが流れてくる。画面上のイラストをタッチすると注文でき、注文した商品が提供される仕組みだ。一定金額ごとにゲームもでき、ある程度のエンターテイメント性を兼ね備えている。
スシローはデジローの試験導入の他に、既に展開している「Auto Waiter(オートウェイター)」も拡大させるようだ。オートウェイターは、タッチパネルで注文した商品が専用のレーンで運ばれてくるシステムで、通常とは異なるレーンが配置されている。デジローとオートウェイターの効果が確認されれば、今後スシローで従来の回転レーンが完全に廃止されるかもしれない。
回転レーンを流れる寿司には、宣伝とエンターテイメント性の効果がある。一方、高精彩な寿司を表示できるタッチパネルが普及したことで、回転レーンの宣伝効果は薄まったともいわれている。実際に入店してから、回転レーンを見ずにタッチパネルで選ぶ人も多いことだろう。「魚べい」などを展開する元気寿司では、業界に先駆けて12年から回転レーンを廃止。「回らない寿司」によって売り上げは落ち込むことなく、むしろ利益率の改善につながっている。
直近の取り組みを見ていると、回転レーンに残るエンターテイメント性の部分でスシローとくら寿司の違いが現れたといえよう。握りの品質を重視するスシローは、レーンの在り方を変えてデジタル化でも良いという考えだ。一方のくら寿司は、子どもや若年層を対象とした施策が多く、エンターテイメント性を重視して従来の回転レーンを残した。
なお、今後スシローとくら寿司は、いずれも強みとしてきたロードサイドに加え、都市部への出店を強化する考えだ。スシローが推し進めるデジタル回転寿司と、くら寿司が維持する従来型の回転寿司。どちらが都市部で受けるのだろうか。都市部での勝敗を分ける大きな要素には違いないだろう。
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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