そもそも日本の管理職は、実にあいまいです。
「管理職の役目って何ですか?」と問えば「そりゃあ、部下の指導と育成でしょう」と、多くのトップは答えます。ならば、新しい人を採用する人事権、報酬などを決める裁量権もあってしかるべきなのに、その決定権は持たされていません。
「管理職は何のためにあるのか」を明確に意味づけするメッセージを出しつつ、ヒューマンスキルの向上も含めた十分なトレーニングや経営的な知識を身につける投資が不可欠なのに、多くの企業はそれをしません。
しかも、管理職とプレーヤーとは明らかに別なのに、多くの管理職は自分もチームのメンバーと同じ業務をやりながらチーム全体の面倒も見ている「プレイング・マネジャー」という、忙しくて忙しくて忙しくてたまらないポジションです。
門前の小僧がトップになれる時代は終わり、プロ管理職、プロ経営者になるための教育が必要なのに、いまだに高度成長期の“管理職幻想“にとらわれ、管理職を会社員の出世街道のプロセスとしか見ていないのです。
管理職にならない、あるいはなれないプロ専門職を、正当に評価する仕組みも必要なのに、それをしません。
こんな状況では「管理職なんてやりたくない」と拒否する社員が増えて当然だし、優秀な部下=次期マネジャーが育つわけもない。ましてや、新しい技術が生まれるわけもありません。
問題は管理職ではなく、その上の経営層にあるという現実を受け入れない限り、何も変わりません。
2013年に初めて公表された「OECD国際成人力調査(PIAAC)」では、「読解力」「数的思考力」の項目で1位を獲得するなど、日本人の能力の高さが明かされました。ただし、その「力」を生かす経営に、潜在能力を引き出す力が経営層に圧倒的に欠けているのが、今の日本です。
管理職育成よりもはるかに問題なのは、経営者育成の問題なのです。
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