三菱総合研究所が、IMD「世界競争力年鑑2022」のデータを元に、日本企業の経営層の問題を詳細に分析した結果の一部をみれば、いかに日本が「現場一流、経営三流」かが分かります(資料)。
これはスイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が、「国家の競争力に関する年次報告」として、1989年から毎年発表するリポートで、調査対象は63の国や地域。20項目、333の基準で競争力をスコア化したものです。
……さて、いかがでしょうか。
現場の力の総力ともいえる「特許」はトップレベルなのに、「経営プラクティス」は最下位です。意思決定も遅く、起業家精神もビリ。どこからどうみても、経営層=スーパー昭和おじさんの教育が足りていないのは明らかです。
世間では管理職や、役職定年になった昭和おじさんを「モチベーションが低い」「会社に依存しすぎ」と批判しますが、はるかに問題なのは階層最上階に上り詰めたスーパー昭和おじさんなのです。その自覚をもたらすには「組織を変えたきゃ、若者、よそ者、バカ者を入れよ!」と言われるように、意思決定の場の多様性を確保するしかありません。
しかし、悲しいかな、絶対的自信を持つスーパー昭和おじさんは、女性を「おじさん中心の社会」の下層部に取り込み、外国人労働者をそのさらに最下層部に取り込み。いまや超マイノリティーとなった若い世代に、「おじさん中心の社会」の後始末をさせている。
冒頭の2つの調査結果は、ある意味において「日本企業の絶望」なのです。
最後に、件のHR総研の調査に記されていた、従業員のコメントを紹介して終わります(自由回答より抜粋)。
……これ以上、管理職を苦しめてどうするおつもりなのか。是非とも、経営層の方のご意見を聞きたいです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング