約20年前からデジタル捺染機を販売するセイコーエプソンは、顔料インクと染料インクにそれぞれ対応した製品をラインアップする。同社によると、ファッション業界のデジタル捺染化は進んでいるものの、いまだ約9割が従来の方法を続けている。
これまでデジタル捺染の大部分は染料インクの製品だったが、同社C&Iプリンター営業部の奥苑(おくぞの)一臣部長は「ここ2、3年で顔料インク対応製品の注文が増え、現在では注文数は同程度になっている」と話す。デジタル捺染であっても染料インクの場合は水の使用量が半分程度にしかならないが、顔料インクは大幅な削減が可能なため、企業に選ばれるようになっているという。
背景にあるのは、世界的な環境意識の高まりと、欧州を中心とした工業廃水や衣類廃棄の規制強化だ。ファッション業界は急激なデジタル捺染化を迫られており、大手ブランドは環境配慮のため顔料インクのデジタル捺染機で作られた生地を求める。
ただ下請け工場がすべて切り替えるのは難しく、まだ顔料インクが不向きな製品もある。奥苑氏は「デジタル捺染が全体の30〜40%にならないと業界全体のシフトは起こらない。価格やインクの種類など多様なラインアップをそろえることで貢献したい」とする。
愛媛大教育学部の竹下浩子准教授は「海外の高級ブランドは染め物工場に依頼する際も排水の処理方法などを詳細に確認する。環境負荷の対策をとらなければ、顧客に振り向いてもらえなくなる」と警鐘を鳴らしている。(桑島浩任)
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